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letter
母の日のお話です。
五月十日、自宅に一通の手紙が届いた。宛先は久遠明日香。差出人も、久遠明日香。それは記憶の片隅に追いやられていた記憶。
「十年後のわたしへ」
ポストから取り出したのが自分で本当に良かった。
「お元気ですか?今の私は、元気ではありません」
知らんわ。いや、知ってるけど。
「単刀直入に聞きます。二つの誓いは守れていますか?もし片方でも守れていないのなら、もう一度十年前の気持ちを思い出して下さい」
誓いなんて意外と可愛いこと言うじゃん、私。
「最近わたしの周りですごく風邪が流行っています。体調にお気を付けて」
そして心配されて手紙は締め括られていた。ごめん、今ちょっと風邪気味。と、そんなことはどうでもいい。今大事なことは一つ。誓いなのだ。