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四月一日の道化 オマケ (9)
「水下だよ」
「嘘」と聞き返すと
「本当」とまたしても素早い切り返し。そしてまた、やっぱり気付いていなかったか、とばかりに志藤は溜息を吐く。
今度ばかりは納得いかず、すかさず私も言葉を返す。
「いつ?いつからあいつそんなこと知ってたの?」
「ずっとずっと昔からだそうだ。十数年も幼馴染をやっていれば、それくらい気付くんだろ」
「じゃあ何?あいつ、あの日私が『好きなのは嘘』って言ったのが嘘だってわかってたってこと?」
「そういうこと」と頷いた後で、志藤は種明かしをするように言った。
「あいつが嫌いな嘘っていうのは、本当のことを嘘だと偽る嘘なんだよ」
あまりにも想定外の話に混乱極まる私の頭では、導き出されるはずの結論がなかなか出てきてくれない。代わりに志藤が、その結論をはっきりと言葉にしてみせた。
「水下はさ、木崎の本当の気持ちに気付いてたんだ」
……ああそうだ。つまりはそういうことだ。