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四月一日の道化 オマケ (6)
「やめてよ、もう。別に、後悔とかしてるわけじゃないんだから」
私はわざとらしいくらいに明るく、志藤に向けて言った。そうでもしなければ、彼は己を責め続けることになるだろう。それを止めることが出来るのは、あの日の当事者である私だけなのだ。
しかし志藤は納得のいかないと言った風に表情を険しくする。その様子にますます戸惑う私の目をしっかりと見据えて、志藤は告げた。
「自分じゃ気付いてないのかもしれないけどな。お前、嘘吐くときまばたきが速くなるんだよ」
「嘘」と聞き返すと
「本当」と素早い切り返し。それから小さく嘆息する志藤。さも、やっぱり気付いてなかったか、とでも言いたげである。