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四月一日の道化 オマケ (5)
「え?」
理解が及ばず私がそんな声を上げると、志藤は覚悟が決まったのか、顔を上げてから事の次第を詳らかにしてみせた。
「俺は、水下が教室で寺石に告白するのを知っていて、木崎に忘れ物を取ってこさせたんだよ」
つまりあの日の出来事は、決して偶然などではなく、志藤によって引き起こされたものだったというのか。志藤の言葉をようやく理解まで漕ぎつけた私は「……どうして?」という問いをかろうじて紡ぐ。
「お前が水下のことを好きなのは知ってたから。そのことを水下に伝えるチャンスくらいあってもいいんじゃないかって思ったんだ」
志藤はそこで一旦区切り
「それが余計なことだったって、今は本当に申し訳なく思ってる」
私の目を真っ直ぐに見て、改めて謝罪の言葉を口にした。そんな彼の姿に、私はやるせない気持ちでいっぱいになる。
私は、志藤に謝ってほしくてあの日の真実を語ったわけではない。たとえあの日の出来事が志藤によって引き起こされたものだとしても、彼はその行為を悔いて私たちの仲を取り持ってくれた。私が言いたかったのは、その礼だったというのに。