四月一日の道化 オマケ (4)
「あの時はごめんね。忘れ物を届け忘れちゃってさ」
今の今まであの日のことに触れてこなかったものだから、これから先も話題に上がることはそうないだろうと感じた私は、お礼と共に言いそびれていた謝罪をすることにした。あの日私が志藤の忘れ物を届けずにいたせいで、彼は新学期早々教師から大目玉を喰う羽目になったのだ。本来なら志藤から責められてしかるべきだったのだが、当時の私の心境を察してか彼はそうしなかった。それが気がかりだった私は、今更ではあるものの恨みごとの一つや二つを甘んじて聞くつもりでいたのだが
「謝るのは俺の方だよ。俺のせいでそんなことになったんだから」
志藤は文句を言うどころか、頭を下げて私よりも申し訳なさそうに謝るのだった。思わぬ反応に戸惑いつつも、私はきっぱりと言う。
「何言ってるのよ。私、志藤のせいだなんて思ってないわ」
確かに、あの日志藤に頼まれて教室に行っていなければと考えたことがあるのも事実だ。当時、同じように謝られていたとしたら私は志藤にあたり散らしていたかもしれない。
だが志藤が頼みごとをしたのは偶然なのだ。彼が責められる道理はない。それくらいは志藤にもわかっているはずなのに、と私が訝しんでいると
「……あの日、水下が寺石に告白することを、俺が知っていたとしても、か?」
志藤は躊躇いがちに、そう問いかけてきた。