花火 オマケ(21)
『それだけじゃない』と、周防君は言った。榊原君は、副委員長で、真面目だからというだけで、私に付き合ってくれているのではないと。
……白状すれば、そうだったらどんなにいいかと思っていた。反面、榊原君にそこまでの期待を寄せる気にはなれなかったのだ。この三か月で、私は彼をごくありふれた人物だと評価していたから。
だが思えば、馬鹿丁寧な返事といい、ここに戻ってきたことといい、私の考えをピタリと言い当てたところいい、榊原君は私の常識も予想も期待も不安も、いとも容易く覆してみせる。
私は榊原洸という人物を、随分とわかった気になっていたのだなと思い知らされた。
もっと頼ってくれてもいいだろ、か……。
もしそうしたなら、彼のことをもっとよく知ることができるのだろうか。
そんな風に思った私は、黙々とゴミ拾いを続ける榊原君の背中に声をかけた。
「そう、忙しくなる。だから……」
頼りにしてる。そう言おうとして、ふと思いつく。
「……頼りにしていますよ。榊原副委員長殿」
常日頃のお返しに、馬鹿丁寧に言ってみたなら、いつもの私のように彼も反応に困ってしまうのではないかと。そんな底意地の悪い私の予想は
「はいはい。かしこまりました、泉委員長」
やはりあっさりと、榊原君には覆されてしまうのだった。
思えばこの時から、榊原洸は私にとって、特別な存在になっていたのかもしれない。
ゆっくりペースにここまでお付き合いいただきありがとうございました
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