129/130
花火 オマケ(20)
顔まで背けて頑として話そうとしない榊原君。恥をさらすまいとしているようにも見える。終いには「なんでも御座いませんよ、泉委員長」と馬鹿丁寧な言葉でもって口をつぐんでしまった。意地でも本心を語って聞かせてくれそうにはなかったので、私は渋々話題を変えることにする。
「まあ、何はさておき、今は鬼に笑われないように目の前のことから片づけていこう」
背けていた顔を戻して榊原君も「そうだな」とゴミ拾いを始める。
「ここに捨てられるごみを少しでも減らすためには、これからやらなきゃいけないことがたくさんあるからね」
そして私は、これから進む私の信じる道を改めて口にしてみせる。誰からも期待されず、称賛されることもなかったかもしれない道。たった一人で進むことになるはずだった道。けれど本当はずっと、すぐ側に誰かにいてほしかった道。
「そりゃ忙しくなりそうだな」
振り返りもしない他人事みたいな返事だったが、それでもどこか覚悟の感じられる声だった。それだけで、疎んじられやしないかという私の不安は簡単に払拭されてしまう。
次回更新は1月12日17時です