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花火 オマケ(19)
「だけど泉。どうしてまた急に?」
何故と言われると、私自身困ってしまう。ほとんど思いつきだったからこそ言い止したのだが、よもや当てられてしまうなどとは思いもよらなかった。私は苦し紛れに答えを絞り出す。
「たまには見に行くのもいいかなって思ったんだけど……」
「けど?」
「一人で花火大会に行くのは悲惨でしょ?」
思いがけずいつかの自分自身の言葉を返される形になった榊原君は、一瞬目をしばたたかせたかと思うと、すぐに笑みを浮かべて「その通りだな」と同意してくれた。
「そういうことなら、ご一緒させていただきます」
「ありがとう。……じゃあせっかくだから、近衛さんや周防君も誘えないかな」
「…………え?」
「もっと大勢で行くのも楽しそうだけど」
「え?ええ?」
私の提案に、表情を一転させて間抜けな声を上げる榊原君。まるでとんでもない裏切りにでもあったかのような顔をしている。思わずこちらも訝しんで尋ねてしまう。
「……どうかした?」
「いや、なんでもない」
「何?気になるじゃない」
「なんでもない!」
「なんでもなくないでしょ?」
次回更新は1月11日17時です