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花火 オマケ(18)
「榊原君」
「なんでしょうか、泉委員長」
懐中電灯の光を榊原君の顔から逸らして呼びかけると、彼はそれに気付かず目を覆ったまま馬鹿丁寧な返事を寄越してきた。そのおかげですっかり弛緩してしまった雰囲気の中、私の『ある思い付き』は言い出しづらかった。結局私は
「ううん、なんでもない」
言葉を濁すことにした。榊原君はようやく目を覆う手をどけて、不満げにくってかかってくる。
「なんだよ、気になるじゃないか」
「だって、来年のことを言うと鬼が笑うって言うじゃない?」
私がはぐらかそうとすると、榊原君は
「来年?……まさか、来年の花火大会に行こうなんて言うんじゃないだろうな」
私の心を読んだかのようにピタリと言い当てて見せた。あまりのことに「……驚いた」と思わず口を突いて出る。
「そのまさかだけど」
「……マジかよ」
どうやら言った本人が一番驚いているらしい。これにはきっと鬼も仰天していることだろう。
次回更新は1月10日17時です