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花火 オマケ(15)
昔から優秀とか特別とかいう言葉で褒めそやされて、何でもできる気になっていた。でも実際には違った。
私はただ、誰かの期待に踊らされて、その結果を周りが称賛していただけ。私は特別な人間なんかではなかったのだ。
だからといって、私は簡単に諦められる人間ではなかった。誰に期待されずとも、称賛されなくとも、自分の正しいと信じる道を進むと決めた。
周りは次第に、そんな私との距離を適切に測れるようになっていく。時には期待して、時には煙たがり、そうして少しでも自分に利があるとわかれば、離れたところから私を褒め称えた。
まるで、ひと夏の夜空にだけ輝くことを許された打ち上げ花火のように。
私はそれでも一向に構わなかった。離れたところからの期待や称賛なんていらない。疎まれたっていい。ただひとえに、私が正しいと信じる道を貫くことができればそれだけでよかった。
……でも本当は恐れているのだ。
いつか期待も称賛もなくなり、ただ疎まれるだけになったとき、私は一人で、自分の信じる道を進むことができるのだろうかと。
次回更新は1月7日17時です