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四月一日の道化 オマケ (2)
とはいえ、つい先ほど彼に話していたのは、とても良い思い出とは言いがたいものだった。七年前のエイプリルフール。三年生への進級を控えた春休みに起こった失恋の話である。
部活で春休みの学校を訪れた私は、そのついでに忘れ物を取ってくるよう志藤から頼まれた。そうして訪れた教室で私は水下に遭遇する。水下は想いを寄せていたさやかに告白し、フられた後だったのだ。
しかし水下の話から、私はさやかが嘘を吐いていることを見抜いた。そうでなくとも、さやかが水下のことを好いていると私は知っていた。だからこそ私は、水下への恋慕に気付かぬフリをし続けていたのだから。
私はさやかの吐いた嘘を水下に教え、改めて告白をするよう告げた。自らの気持ちには嘘を吐いて。
結果、水下とさやかは恋仲となり、私は嘘だと偽ることでしか自身の想いを告げられず、その後も偽りの気持ちの下で涙を流し続ける羽目になるのだった。