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花火 オマケ(5)
炎天下、蝉が賑やかどころか喧しく騒ぎ立てる中、私たちは校舎の前にいた。
「それで、泉。校内清掃って具体的にどこを掃除するんだよ」
尋ねてくる榊原君は、きつい日差しに目を細めつつ、ジャージの上を腰に巻きつけていた。その手には軍手がはめられている。
「校舎内は大掃除のときにやったし、他にこんな恰好してまでやる場所なんてあるか?」
私の手にも軍手がつけられている。格好も野暮ったいジャージ姿である。この暑さでは一刻も早く着替えたい衝動に駆られるが、事情が事情なので仕方がない。私はその事情とやらを榊原君に説明する。
「バックネット裏、って言ってわかる?」
「グラウンドと外の道路の間の、フェンスとネットで仕切られた場所だよな」
一般生徒には基本的に縁のない場所で、せいぜい部活や体育でボールが飛んで行ってしまったときに入るくらいである。そのため特に整備がされているわけではなく、夏真っ盛りの今現在では草が生え放題だった。ジャージはそれに備えての装備である。
次回更新は12月28日17時です