花火 オマケ
七月「花火」の一年前にあたるお話です。
(七月のオマケですので『第四章 七月』に割り込み投稿したいところなのですが、そうすると新着作品に表示されないため。やむなく最新話として投稿しています)
七月も中頃、期末試験の結果に一喜一憂していた生徒たちも、一週間後に控えた夏休みへと思いを馳せはじめていた。とりわけ一年生は、高校生活初となる長期休暇を目前にして、皆が皆、期待に胸を膨らませていた。自然と休み時間の教室は、夏休みの予定についての話題で持ちきりになるのだった。
かくいう私もご多分に漏れず、夏休みの予定について取り決めるため、一人の男子生徒に声をかけた。
「榊原君」
「何でしょうか、泉委員長」
妙に畏まった返事を寄越したのは榊原洸。同じクラスで私と共に学級委員を務める男子生徒である。
容姿、成績、性格どれをとっても平均的でごく平凡。目立ちすぎず埋もれすぎないありふれた人物なのだが、このわざとらしく馬鹿丁寧な第一声だけは想像だにしなかった。委員長と副委員長として三か月ほどの付き合いになるが、未だに意図がわからず適切な返答も思い付かないでいる。仕方なしにこの第一声については無視することを決め込んでいた。
次回更新は12月24日17時です