四月一日の道化 オマケ
本編より文字数が多いというオマケとは名ばかりのモノとなっております。
舞台は本編の七年後。本編に名前しか出てこなかった人物も登場しております。
「っていうことがあったのよ」
そう言って、思い出話を締めくくる。七年も前の出来事だと言うのに、語り出すと記憶というものは次から次へと蘇るもので、気付けば長いこと一人で喋り続けていた。渇いた喉をぬるめの紅茶で潤しつつ、向かいに座る聞き手の方を覗うと
「なるほど。で、水下と寺石は付き合うことになったと」
と、彼は更に思い出話を総括するように言った。感想らしい感想はないらしかったが、時折のぞく憂いの表情が、彼の心の内を如実に表していた。なんとも彼らしくない表情だと私は思った。
彼の名前は志藤謙介。高校一年生の頃にひょんなことから知り合い親しくなった同級生である。二年生になると、陽気な彼は私の幼馴染にして馬鹿正直者の水下修治にちょっかいを出し始めた。そこに嘘が大好きなクラスの女子、寺石さやかが加わり、それ以降は私を含めた四人で行動を共にすることが多くなっていった。
イベント好きで陽気な性格の志藤の行動力は止まるところを知らず、私たちどころかクラス、ひいては学年学校全体を巻き込んでいき、結果的に私は多くの騒動の中心に関わっていくことになる。当時こそ迷惑極まりないと思ったものだったが、今となってはどれも良い思い出となっていた。