NoName(9)
「サークルで仕事って言い方は変かもしれませんが、僕にとってラジオは仕事だったんです。最初にOnAirに入った時、僕はこのサークルが好きではありませんでした。あーねぇは、高校の時の軽音楽部の部長で、当時一緒にバンドを組んでいました」
一緒に組んでいたと言うよりは、ライブ前にメンバーの欠けた僕らのバンドに参加してくれたのだが。あーねぇはいつもそうやって僕が困っていると助けてくれる。男としてはちょっと立つ瀬がないなとも思うが、とても恩を感じている。
「それで、たまたま同じ大学に入学したので一緒にまた同じサークルに入ってバンドを組みたいと思っていたら、あーねぇ、バンドやらずにラジオ録ってたんです。当時のOnAirと言えば、人数も少なくて、機材の知識もみんなあまりなくて、そもそもサークルですらなく同好会でした。でも、あーねぇにどうしても入って欲しいと頼まれて、断ることができませんでした」
正直、嬉しかった。いつも僕が頼ってしまっているあーねぇが、今度は僕を頼ってくれている。だからこそ、期待に答えたかった。
「だから、入ってもあくまでラジオは仕事で、活動時間以外はOnAirの人とも付き合いませんでした。それが、いろいろあって、みんなで本気でラジオを作ることになって、それが本当に楽しくて」
感情に任せ勢いで話してしまったことに気づき、僕は一度ゆっくり呼吸をする。