NoName(8)
「次のコーナーは、エンディングです」
僕はあーねぇがいた席を眺めながら『会話』を続ける。
「準備に何ヶ月もかけた学園祭もあっと言う間に終わってしまい、今日みんなが起きてしまったら跡形もなく片付けられてしまいます。当然そうあるべきだし、みんなだって寂しいはずです。ところで、サークルOnAirは学園祭で先輩たちが卒業してしまいます。ずっと一緒にラジオをやってきたあーねぇも、他の先輩方も、みんな。片付けが終わった後、卒業式をやるのが恒例なのですが、先輩方、泣いていました。僕自身は泣かなかったのですが、それは単に実感が沸かなかっただけなのかもしれません。先輩方はまだ学校に在籍しているし、会えなくなるわけではないのですが、片付けが終わってみんなが帰った後、急に胸が苦しくなりました。さっきまで一緒に騒いでいたあの人達は、もう僕らと同じ場所には居ないんだって思えてきて、涙も出てきました。仕事自体には何も不安は無いし、むしろ自分たちの好きなように出来るんだって考えると嬉しいくらいです。でも、それでも寂しく思うのは、先輩方と仕事仲間以上の関係になれたってことなんですよね」
話しながら、昔のことが頭に浮かんでくる。あーねぇとは小さい時からずっと一緒にいて、幼い頃からずっと引っ張っていってもらっていた。優柔不断な僕に、物事を簡単に決めすぎるあーねぇ。簡単に事を運びすぎて時々不安になることもあったけれど、それでもあーねぇには付いてくる者に安心感を与える不思議な雰囲気があった。