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四月一日の道化
エイプリルフールのお話です。
四月一日。
部活で春休みの学校を訪れていた私はそのついでに、友人の忘れ物を取りに教室へと向かっていた。
わざわざこんな日に頼んでくるあたり、私を騙す嘘なのではと疑ったのだが、どうやらそういうわけでもないらしい。
結局、素直に友人の忘れ物を取りに行くことにした私は、たどり着いた教室で思いもよらない人物と遭遇する。というより、誰かがいることさえ思いもよらなかった私は、正直かなり面食らった。相手はというと、やってきたのが他ならぬ私だったということに驚いたのだろう。その口から「嘘だろ」という呟きが漏れる。
彼の名前は水下修治。私、木崎晴子の幼馴染である。そして彼の呟きは、お人よしで馬鹿者の彼の昔からの口癖だった。ただ今回に限っては、疑念というより彼自身の願望を口にした言葉だったのかもしれない。