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サバ缶食ってりゃ死なねぇだろ!……たぶん。  作者: さかき原 枝都は


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第52話 第三章 祝福されたい心と憧れのかたち

 夜が深まる中、ソファに並んで座る二人。

 智春はいつものように、無邪気にサバ缶を手にしている。

 和音はその横顔を見つめながら、胸の奥で何かが小さくうずいているのを感じていた。


(……そう、次は……次こそ……)

 和音の胸の奥で、小さな勇気が静かに、しかし確実に準備されていた。


 その勇気は、智春と手をつなぐ、肩を寄せるという日常の一歩以上の行動を示唆していた。

 和音の心は高鳴り、自然と呼吸が速くなる。

 この胸の鼓動は、もはや単なる緊張や興奮ではなく、二人の関係をもっと濃密にしたいという渇望そのものだった。


 智春が手にしたサバ缶をふと落とす。

 カラン、と小さな音が部屋に響く。


「うわっ、すみません!」

 智春が慌てる。

 和音は思わず笑い、咄嗟に手を智春の手に添える。


 その瞬間、和音の心の中で、勇気がさらに強く膨らむ。

 智春の無邪気さ、鈍感さ、マイペースさ。

 すべてが、和音の「次の一歩」を押し出す力となる。


(……これを逃したら……後悔するかも……)

 和音は小さく息を吸い込み、智春の手を握り返す。

 智春はびくっとするが、すぐに照れ笑いを浮かべるだけで、何も言わない。

 その無防備さが、和音の胸の奥の勇気をさらに加速させた。


 和音の心の中では、次に踏み出す勇気が波紋のように広がっていた。


(……そうだ、もっと近くに……肩に寄せても……いい……よね?)

 小さな声で自分自身に言い聞かせる。

 智春の自然な笑顔が目の前にある。

 手を握るだけでなく、肩を重ね、少し体を近づける勇気。


 和音はそっと体を寄せる。

 智春は微かに驚き、でもその後は自然に肩を許す。

 この一瞬が、二人の関係に新たな密度を生む。


 和音の心はドキドキと高鳴り、期待と焦れの両方でいっぱいになる。

 しかし、智春の穏やかさ、鈍感さに安心も同時に感じる。


 だが、和音の小さな行動は、思わぬドタバタを生む。

 智春がサバ缶をもう一本手に取ろうとして、うっかりテーブルを押し、缶が飛び出す。


「うわっ!」

 智春が慌てて缶を捕まえる。

 和音も慌てて手を伸ばし、二人の手が再び触れ合う。


 その度に和音の胸の奥の勇気はさらに熱を帯びる。

 「このまま……もっと近づけるかも」という予感が、行動に拍車をかける。

 同時に、智春の鈍感さが絶妙な緊張と安心感を生み出し、和音の気持ちは複雑ながらも幸福感に満ちていた。


 和音の胸の奥では、次の勇気は単なる物理的な距離ではなく、心理的な深さを求めていた。


(……そろそろ……ちゃんと……言葉でも、気持ちを示してみよう……)

 しかし、智春の無防備さに気圧され、なかなか声にならない。


 それでも和音は、自分の心の中で小さく決意する。

 この夜、彼女の胸の奥で芽生えた勇気は、次に踏み出す行動への道しるべだった。


 肩を寄せ合い、手を重ねるだけの簡単な仕草。

 だが、それは二人にとって、確実に恋愛を次の段階へ進める重要な一歩である。


 一方、智春もまた無意識のうちに変わりつつあった。

 和音の手を握る瞬間、心臓が跳ね、何か胸の奥が熱くなるのを感じる。


(……なんだこれ……和音さんと、ただ一緒にいるだけで……)

 まだ「恋愛」という言葉には気づかないが、智春の心も少しずつ変化している。

 和音の近くにいることが、自然に居心地よく、心地よく感じられる。


 その無自覚さが、逆に和音の勇気を後押しする。

 智春が鈍感であることで、和音は少し大胆な行動に出られるのだ。


 二人はそのままソファで寄り添い、缶詰を開け、軽く乾杯する。

 外の街灯が差し込み、部屋を柔らかく照らす中、二人の距離は物理的にも心理的にもさらに縮まっている。


 和音の胸の奥では、次の勇気が確実に膨らんでいた。

 ほんの少し体を寄せるだけで、言葉にしなくても心が通じ合う瞬間。

 次に踏み出す一歩は、サバ缶のドタバタの中で育まれた小さな信頼と連帯感の上にある。


(……次は……もっと……近くに……)

 和音はそっと智春に寄りかかり、未来への小さな決意を胸に抱いた。


 智春はその自然な仕草に気づかず、ただ微笑みながら手元のサバ缶を開ける。

 しかし、その微笑みの向こうには、二人の関係が次第に濃密になり、より深く心を結ぶ予感が確かに漂っていた。

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