依頼人
コークが開いた扉の先には、グレーの髪がよく似合う華奢な女性が立っていた。
「こんにちは。何でも屋へようこそ!ご依頼ですか?」
コークがそう聞くと、女性はこくりと頷いた。後ろからリアムも顔を出し挨拶をした。
「こんにちは。ようこそぉ〜お名前を伺っても?」
「あ、え、と、アディラ・グレース……です。」
だんだん声が小さくなっていく様子にも関わらず、リアムはニコニコしながら質問していく。
「内容を聞く前に中へどうぞぉ〜」ほんわか和やかに対応していくリアムについて行く依頼人のアディラ。
お互いソファに座り、コークが紅茶を淹れよう…と思っていたその時だった。
「ねぇねぇコーク。私朝ごはん食べてないからお腹すいちゃったぁ。」ほわほわと花を飛ばすように話をするリアム。
高い位置から優雅に紅茶を淹れるコークの手が変に傾いて溢れてしまった。コークが怒りそうなのを横目にリアムは依頼人のアディラに話を聞き始めた。
「アディラ…さん?具体的な話を聞いても良い〜?」
「リアムさん!話を聞いてください!」
「コーク、今はアディラさんの話を聞く時間。」
「僕の話はいつ聞いてくれるんですか…」項垂れるコークを無視するリアム。
アディラから見たら、兄弟喧嘩を見ているようなものなのだろう。
「えーと、どこまで話したっけ?」
「あ、まだ何も話してないです。」
「おぉ〜そっかぁ〜。なら、話してくれるかい?」
「は、はい。私の家には別荘がありまして…」
「別荘?ということは、君はどこかのお偉いさんの娘さんかな?」
「えっと…どうなんでしょう?」軽くリアムの質問を受け流してしまうアディラ。
(グレース…ねぇ…どーこかで聞いたことあったけど…)リアムは話を聞きながら自分の思考をまとめていた。
「ん〜まぁその辺は追々として…別荘についての依頼かい?」
「はい、そ、その別荘が開かないんです。なので、私の家の別荘を開けていただくことが今回の依頼です。」