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第9話 置き土産

業務日報

 渇水の月十七日

 記録者 コンス侯爵家冒険公社 スーナ支社長 男爵サイアム

 収支報告は帳簿の通り。渇水期に入り、日陰は涼しいが日向は耐えがたいほど暑い。

 本日、ゴブリン村よりチーフの息子が訪れ引っ越しの挨拶をした。正直寝耳に水だが、侯爵家の承認はおりていると証書を見せられた。ロドミゴ様の名前がある。

 主家の人に口汚い言葉を発しそうになった。

 ダンジョン氾濫のときの件でスーナ伯爵家とはうまくやっていく見通しがなくなったので、侯爵領に引っ越さないかと誘われたらしい。彼らがミスリル製造できること、ロドミゴ様は知ってたようだ。

 引っ越し先は密猟者たちが拠点に使っていた洞窟付近。あれを掘り進めてミスリルを栽培するための畑を作るのだという。そうか、ミスリルって栽培するものなのか。

 黙って行っては伯爵家としこりを残すということで、エルフからの戦利品の体裁でミスリル製品を五点ばかりおいていくという。ミスリルの銀糸で編んだドレス、剣、胸当て、ブローチ、鍋だそうだ。もちろんゴブリンの職人が作ったものだ。伯爵家はものいり状態なのでサイズがエルフでなく人間サイズなどおかしなところがあっても歓迎するだろう。

 まさかと思って確かめるとはたしてロドミゴ様の入れ知恵だった。

 あの坊ちゃん、散々かき回していってくれたものだ。


業務日報

 冬枯れの月十日

 記録者 コンス侯爵家冒険公社 スーナ支社長 男爵サイアム

 収支報告は帳簿の通り。支社長として最後の日を穏便に終われてうれしい。

 これから大陸をわたって僻遠の地での勤めに赴く。ロドミゴ様、客人、そしてなぜか殿下もいるという。侯爵様の命令では、しがない男爵は唯々諾々あるのみ。

 なのだが、なのだが。

 あっちでは思い切り切れてもいいだろうか。うん、いいということにしよう。

 それではスーナの平穏な日々よ、また縁があれば


業務日報

 雪解けの月七日

 記録者 コンス侯爵家冒険公社 スーナ支社長 騎士ステウス

 収支問題なし。帳簿の通り。

 前支社長の消息を聞く。

 殿下も坊ちゃまも彼に怒鳴られながら楽し気に冒険の日々を送っているらしい。

 少しうらやましい。

                               終わり

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