第二話 邂逅からの逃亡
あれ絵文字だったんだ。生首だと思ってた。
「いやそんなことはないと思う」
「…へ?」
「なんだお前、リレイジ正教会の仲間じゃないな?」
私がすっ転んだ先は丁字路になっていて、横に見える道から誰かが突っ立って喋っている。
なんだこいつ。
連中の言葉から察するにリレイジ正教会の手のものではなさそうだ。
しかし、何者だ?
見たところ種族はヒューマン、剣を腰に提げていることから見て戦闘職なのだろう。
というかこいつ性別は?
わからない、声は中性的、ガタイはそれとなく良くて男っぽいが、顔の感じや全体的な体の感じが女っぽい。
いや、今はそんなことを気にしてる場合じゃない!
「あ、た、助けてくれ!このままじゃ殺される!」
「あ、おい!喋るな!」
止めてくれるな正教会の追手。
こいつに助けて貰わないと私は一巻の終わりなんだ。
「でも君は魔女じゃないか。自分は知ってるぞ。魔女は成長すると魔物になるんだってな」
「確かにそうだ、私以外はな!私は定期的に体の成長をリセットしてるんだ!」
「おい黙れ、黙るんだ!」
「え、そういうのもいるのか?」
「そこのお前、魔女の言葉に耳を貸すんじゃない!」
「うるさい!!!おい早く助けろお前、何でもするから!」
もうどうにでもなれだ。今助かりさえすれば後でどうなろうと構わない。
例えこいつに奴隷の様に扱われたって、私の舌がうまく回るようになるまでの天下だ。
「ん?今なんでもって」
「ああ言った!早く助けてくれ!」
「…わかった」
…おぉ、本当に助けてくれるとは思わなかった。
しかし、こいつ戦うつもりか?
剣こそ抜いてはいないが目が戦う者のそれになっているように見える。
「先輩、魔女を抑えておいてください」
「…頼んだぞ」
追手の二人の内の後輩らしいやつも剣を抜いて戦闘モードに入った。
「お前、その身なりからして冒険者か?俺も少し前まで冒険者稼業をやっていてな。何級だ、俺は銀級だが」
この男、言外にお前に勝ち目はないと言っている。そりゃそうだ。銀級といえば普通の冒険者の中でも三分の一もいない。
そしてそれ相応の実力がなければなれない階級だ。
そうでなかったら冒険者教会は今頃廃れてるだろう。
「…『肉体強化』」
正体不明のヒューマンがそう一言呟くと何やらオーラのようなものがそいつに纏わりつく。
「答えろよ…それは魔法か?いや、詠唱破棄ができるなら属性魔術じゃない…お前のそれは固有魔術か?」
「その通りだ」
この男、意外にものを知ってる。普通の人間はそんなに魔法について知らないものだ。
「ならば俺も、〘汝静かなる大地よ、今こそ我にその力与えん〙『腕力増加』」
意外にものを知ってると思ったらこいつも魔法を使えたのか。
一体どうなるのか、この戦い。
本当に勝ってくれよ正体不明のヒューマン…
と思ったら消えた!?
一体どこへ…
「!?…先輩!」「何!?」
「貰っていくぞ」
「…へ?」
と思ってたら私は正体不明のヒューマンに背負われていた。
「それじゃあな」
無表情のままそう言うとこいつは私を背負ったまま飛び上がった。
飛び上がった?
「うぉおおおあああああああ!!!!!」
「待て!」「逃がすか!」
そのままリレイジ正教会の二人を置き去りにして建物の屋根に乗っかると、そのままとんでもない速度で逃げていったのだった…
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁ゛!!!!!!」
落ち着いて聞いてください。
ストックが終わりました。