第四章
色というのは非常に混乱をもたらす。できることなら色のない白黒の世界で生きていたい。色は時に牙を剥く。どうしてだって世界を染めてしまうのだから。それならいっそモノクロ地獄のほうがましだっていうものだ。
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プロトは部下のサザと話をしていた。サザは29歳の若手でプロトより年上だった。サザはエソの甥でありエソがなくなったあと真っ先にエソの遺言に従いプロトについてきた株だった。
清廉潔白で色白、顔はすこし幼気だった。ところが実力は折り紙つきで今まさにカイルの情報をプロトに話をするところだった。
「それで情報は出てきたか?」
プロトがサザに問うた。
「はい。出てきました。4年前の決起集会のとき地元の貴族に金を献金していたようです。その金は元々バイルの資金で公共工事に使われる予定のものでした。それを取材したジャーナリストはその後不審死を遂げています。」
「カイルの仕業か?」
「わかりません。ただカイルの周りではこういったことが稀ではありません。恋人役の女性を何人も揃えて城にこもるように影で操るのがカイルの得意技です。」
「御苦労。よくやった。」
プロトは思案した。カイルはなぜこんなに策がうまいのか?それはおそらくは純血派の地位を利用してうまいこと立ち回るのが得意だからであろう。それならそうだ。完全にこれだけしかできない弱虫みたいなものである。プロトの策の方が優勢になるでだろう。プロトは用意周到であり次の決起集会、(つまり総選挙だが)までじっくり策を練る時間があった。
まずやるべきは資金源の活路を断つことだ。表向きは慈善家、裏では違法者として存在を許されている地元貴族に対しこちらから交付金を削除する旨を伝えることで裏の活動をできなくする。そうすればカイルの人脈のパイプが細くなる。
プロトはすぐに指示をした。予算委員会の承認を得ずにエソの後継者の名目を利用して交付金の中断に至ったのである。そのことにカイルは動じているのかいないのはわからなかった。だが確実に資金源は断った。
カイルが次どういう手でくるのか。
3週間後
カイル側は動揺しているようだった。
新聞の記事に慌てふためいている現状を吐露していて寄付まで募っていた。おそらくは怒り心頭という感じだろう。
カイルのパトロンがほとんどプロト側に付いた。これは好都合だ。だがその先の手はもうすでに読めていた。どうせアガティール側に交渉にいき自分たちだけの地位や名誉を保証してもらって人民のことは無視するに決まっていた。
だがこればかりは手は打てなかった。そういう輩は決まって甘い汁を吸う権力勢や土地柄を誇りにする勢でありそこはなかなか崩せないだろう。アガティールという後ろ盾があればますます力を得てくるかもしれない。
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カイル
俺の名はカイル。幼少時は親が死んで不幸だったがたまたま力があったからのし上がってこれた。次の決起集会では必ずトップの座にのし上がってやる。エソが死んでくれてよかったよ。今はプロトとかいう若造が俺達に対抗しようと企んでいるらしいがまあ世界というものは悪を好むものだよ。
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土地豪族たちが離れている。どういうことだ。?
あそこの有力貴族たちにも連絡がつかない。
これでは組織票が入りづらくなる。
一体全体どういうことだ
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やばい。どいつもこいつも裏切りやがった。
もう最終手段に出る。アガティール帝国に親書を送り土地と引き換えに身分保障をしてもらうしかない。
これならどうとでもなる。
しかしあのプロトとかいう奴なかなか手強いやつだ。
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決起集会が迫っていた。
地元では胡散臭い連中がビラを配りどちらにつくのかつかないのか情勢はわからなかった。屋台では予想屋が何軒も軒を連ね賭け事まで行われていた。
人民はどちらにつこうがどうでもよかった。現代の世界情勢では弱いものは食われる。生きていくのに必死だった。
そんな世の中を変えたかった。プロトは思った。選挙情勢は読めなかったが一生懸命選挙活動を頑張った。サザや他の仲間も信頼していた。みなが付いてきた。
選挙当日になった。
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群衆が集まっていた。大きな役所の庭にかなりの数の人民がいた。今日ここでプロトとカイルの一騎打ちが始まる。
そして投票が行われバイルの新たなリーダーが選ばれる。
ゴールではそれが習わしである。そしてすべての権力が一点集中するのだ。
司会が入ってきて群衆を静かにさせた。
裏ではプロトが燕尾服を来て準備していた。反対側にはカイルがいた。金の刺繍のある服を来て王冠まで被っている。とんでもないやつだ。なんとかして勝たなければいけない。
そして始まった。
まずカイルが入った。
「お集まりのみなさん。カイルです。今日ここに集まってもらったのはバイルの空気を変えるためです。新しいリーダーとして私を選んでください。対立候補のプロトは腰抜けです。なにせ若い。そんなやつには務まりません」
プロトが入り応戦する
「みなさん。この地では長らく不況が続いてきました。それは癒着や政治の腐敗によるものです。人民のことを考えず大国の機嫌取りを行ってきた結果です。まさにこのカイルという男が諸悪の根源なのです。共に変えましょう。私に一票を」
「何が諸悪の根源だ?みなさんこの男はエソの後継者だということです。しかしこの男はアガティールを倒すという絵空事を言っています。みなさんどう思いますか?」
「アガティールは倒すことができます。今は無理ですが次第に国力をつけいつかひと泡ふかせ進軍するのです。」
民衆は夢中になって聞いていた。
そしてプロトは切り札を出した。
「みなさん。エソはこのカイルという男が仕向けた罠にかかり死にました。暴力者を政治に出していいのですか。この男は裏では献金やマネーロンダリングなど枚挙にいとまがないことをやりまくっているのですよ。」
「そんなことのやっていません。私は人民のことをかんがえています。先に死んだエソも大変立派な方でした。私は丁重に神に祈願しました。」
すこしプロトが動揺していた。
人民はその少しの感触がわかったようだった。
人民の誰かが大声で言った。
「カイルは人殺しだ!」
その声は次第に大きくなった。
「カイルは人殺しだ!」
司会が収集がつかなくなったようで決起集会は幕を閉じた。
翌日
開票まで待ちきれなかった。プロトはユンの位牌の前でこのままの生きおいで勝ち切ることを誓った。
ユンが生きていれば。お互いに支えあえただろうに。
ユンは天国で見守ってくれているさ。プロトは思った。
一方でカイルの側は不安でしょうがないだろう。若造だと思った青年が思ったよりも有能で弁が立つときたらそりゃ不安にもなる。
開票が終わった。サザや他の部下とともに結果を見守る。
サザは言った。
「プロト様。もし勝てなくても付いていきますよ。なにせエソの後継者なのですから」
「ああありがとう。」
結果はプロトの圧勝だった。
周囲が拍手喝采に包まれた。
まさか圧勝とは思っても見なかった。それほど民衆の心は政治とは離れていたのだろう。これからは民衆のことを第一に考えて政治を行おう。たとえ第三国がせめてきても毅然として抵抗しよう。
選挙で勝ったことで軍隊の司令権がプロトに自然と移った。これで全権掌握である。一方のカイルはどうかというと開票から3日後国外に脱出したとのことだった。
最初から最後まで国賊だったな。
何しろこれでしっかりと国を立て直すことができる。
内政機構や軍の増強などやることはいくらでもある。きたるアガティールとの戦争に向けてそして思えばこのバイルという国名に関しても気がかりだった。この名称はもう古い。そんなこんなでプロトのトップへの就任が決まったのである。
翌日
決起集会の最後にあたる就任演説が控えていた。部下とプロトはその準備で忙しかった。
しかしカイルが国外逃亡したのは意外だった。そうとう悔しかったのかあるいは後ろ盾に何かを言われたのか知らないが国を裏切る行為には違いはなかった。改めてとんでもないやつである。
部下のサザが何かを持ってきていった。
「これは正式なバイルの王冠です。中央から送られてきました」
なるほど見てみると立派である。しかしバイルのこういう貴族体質なところが他国からつけ入れられる体質へと変化していくのではないか。
しぶしぶ受け取ったが明日の就任演説ではこれをつけるのか。まあいい。変化というものはゆっくりと進むのだ。一晩寝てゆっくり休もう。




