第三十七章
シスラビが前線に出たことで兵士達は歓喜した。もう苦労することはない。なに我が軍の最新鋭機が全部やってくれるさ、と。しかし敵軍総大将のカイルの対応は速かった。センティーヌの切り札が出たと見た途端すぐさまGAIASを送り込んだ。GAIASの速度はプロトが予想していた速度より速かった。おそらくイジって性能を上げたのだろう。
シスラビのパイロットはGAIASにミサイルを発射した。射撃が上手いパイロットでそれは当たったはずだった。しかし避けるまでもなくGAIASに搭載された回避専用の弾幕によって迎撃される。当然それはAIのもとに行われた。
シスラビは作戦を変えた。すぐに後方に後退しエルキタナソの近くまで下がることにしたのである。相手はAIである。こちらに友軍がいると判断すればどういった対応をとるのかにもラグが出るはずだ。
GAIASはそれには何ら反応を取らなかった。AIはこちらに近似している敵を後回しにすることを選んだのである。GAIASは地上にいる部隊を消滅させるため広範囲爆撃を開始した。
これではだめか。シスラビのパイロットとエルキタナソのパイロットは同時に思った。
すぐにGAIASを止めるためエルキタナソは後方にいたままシスラビは前方へ突撃した。
GAIASはこれを待っていたといわんばかりに近づいてくるシスラビにビーム刀を抜いた。
「おいAI。こちらとまともに戦え」
シスラビのパイロットはそう叫んで同じ武器によって格闘する。
しかし刀を持った機体の利き腕が違った。GAIASは左碗で持っていた。相四つのような形となったため機体同士が接近した。そうなるとGAIASは弾幕用のオート射撃を使いシスラビに向けて発砲した。
シスラビは上手いこと下がることで避けたが視線を戻すとGAIASの刀の持ち手が変わっている。左から右へと。
さすがはAIと言ったところか。そう思っていると今度はGAIASから突撃してきた。
「やばい」
そう思った瞬間GAIASのとんでもない加速力によって突撃されたシスラビは対応できずビーム刀の餌食となった。ショートを起こし飛行不能までになったシスラビは戦闘データをエルキタナソに送って衝撃力等のデータを送信した。
エルキタナソは最後の砦だった。この機体にはラーミアの想いが詰まっている。
戦闘が始まった。
エルキタナソに取り込んだシスラビから送られてきたデータは疑似AIシステムによって解読されていた。
エルキタナソのパイロットはそこから得た情報で作戦を練った。まずGAIASが不規則な動きをした場合の対処だ。
GAIASに取り囲むように展開しこちらも不規則な動きをすれば良い。所詮はAIなのだから。
GAIASは予測通り不規則な動きをしながらこちらに接近した。
エルキタナソは周りを囲むようにして対処する。
この機体が最後の砦だと言われている理由がここに来て判明する。エルキタナソはラーミアによって造られこの機体の秘密は敵の通信機器の無効化である。その発動条件は姉妹機シスラビが戦闘不能になる際敵機の固有データを取得し得たデータをエルキタナソに送信することで発動する。ここで得た固有データがまさにシスラビの衝撃時に得た衝撃力のデータだった。このデータによりおおよその機体の質量出力最大速度などが計算されてしまう。
エルキタナソはそのデータを頼りに特殊粒子を放出した。
周辺一帯がその粒子に取り込まれ通信不能となる。
当然GAIASは通信不能となりAIとは言えGPSなどが使えなくなると最早戦闘に必要なデータは取得できない。こうしてこの戦いは終わった。GAIASは動きがおかしくなった後エルキタナソによって葬られた。
エルキタナソが最後の砦と言われるのには味方陣営の通信すらできなくしてしまうことにある。だからこの最後のシステムが上手くいかなかった場合あわよくば味方に不利になってしまうことも考えられた。
プロトは戦闘が終わったことを見て安堵した。
ラーミアから聞いていたもののあのエルキタナソのシステムは世界初だろう。敵も知っているわけがない。不幸にも今はどこにも連絡が取れない。粒子が自然消滅するまで時間がかかり敵の様子すら情報が入ってこないわけだ。だがGAIASを落としたことで地上部隊が活気づき再び進軍することができた。これは現場の判断ということになる。
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カイルは慌てていた。慌てていたどころが動揺していた。そしてすぐに怒り出し将軍であるワルターを殴った。
「GAIASが機能しなければこちらに勝ち目なんてないんだ」
そう言って怒っていたが根っからの自己防衛本能は一人前でありここからどうやって逃げるかを思案し始めた。連絡する当てはある。トレスカーザミーアの王タカサキである。彼に連絡して匿ってもらうことを瞬時に判断したものの通信しようとしても連絡がつかない。
「故障か。くそこんなときに」
前方で空を斬る音が聞こえた。
エルキタナソである。
通信が使えない今現場の判断で敵の大将を取りにきたのである。
「うわああ」
こうしてカイルは捕まえられ、この戦争が終わった。




