第三十六章
この戦争は二人の同郷の出身者による戦争とも言えた。一人は迫害された歴史から対峙しもう一人は自分の私利私欲のために動いている。
状況が変わった。トレスカーザミーアの捕虜兵による奇襲によってクリスマスまでに帰るという約束は反古になった。兵士の士気はガタ落ちとなり一斉に塵のように雲散霧消した。
プロトは現状を快く思っていなかった。まさかカイルにこんな手があるとは。そう思った。
帝国に対する敵愾心から参加していた兵士だったが敵がトレスカーザミーアの捕虜兵だとわかると一斉に口を揃えてこんな戦争辞めたいとまで言った。
テムイ川から一気に後退し情勢はアガティールの優勢となった。中には必死に抵抗するセンティーヌの兵士もいたがトレスカーザミーアの兵士は死ぬこと以外かすり傷とも言わんばかりの勢いで迫ったため皆驚愕し銃を降ろして雲散霧消したのだ。
アガティールのワルター・セビウスは笑っていた。
元々どうでもよい兵だったが意外とやるじゃないか。それに対しカイルも同様笑い返し今の戦争のあり方を楽しんでいたのだ。
カイルに言わせれば戦争はゲームであり国内の逼迫した経済情勢を一変させる手段である。不況の原因は中間層による分断であり一致団結させるために戦争を利用したのだともいえる。
カイルはこの戦争であることを試そうとしていた。無人兵器である。GAIASのことだけではない。ドローンである。
「そろそろ使うか?」
カイルが強面を浮かべながらワルター・セビウスに話す。
「ええ。ここらで使うべきでしょう」
ワルターが同意し戦場にドローンが戦争に投入された。
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プロトの陣の前方に何か物体が飛翔している。
「あれは何だ?」
プロトは最大限警戒しあらゆることを疑い迎撃を命じた。
その瞬間飛翔物から爆発が起き周囲はゴミの山となった。
サザは気付いた。元々物資運搬のために開発されたドローンをカイル達が戦争兵器に利用していることを。
ドローンは数を増やし大変な量となった。ざっと100機はありそうだ。
しかしカイルのやり方が甘かったせいかほとんどが迎撃された。
「ッチ」
カイルの声が漏れた。
最初の怪しいあの一機が最初からプロトを狙ったものだったと気づいたのはサザだった。
プロトはすぐに後方に下がり側近が身を固めた。
カイルの考えではドローンはこういう全面戦争では役を変えない限り役に立たない。隠密の側面が強すぎるあまり敵陣本体へ突っ込んでも迎撃されるだけだ。カイルは使い方を間違えた。しかしこの後の世界ではちゃんとした使い方を世界は示すだろう。
プロトの心臓はまだバクバクいっていた。
しかしこんなことでめげるプロトではない。心配する部下を余所にカメラを使って前線から送られてくる映像をずっと見ていた。
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状況は良くなかった。敵のほうが優勢だった。
テムイ川をずっと下って来られてしまい陣地は縮小した。
ここに来てプロトは始めてシスラビとエルキタナソの投入を決めた。どちらも敵のGAIASのコピーとして開発され性能的に上回っているとの評価を受けた機体だ。
だが相手はそれを知っているはずだ。これは全面戦争となるだろう。この機体は一度に出来る攻撃範囲が広く戦況を一気に変えられる。レーダーも精巧で迎撃システムも備えている。こちらのコピー機には有人だがあちらのGAIASには無人だというのが今までの情報で分かっている。
どちらにせよ開発されたものは一度陽の目を必ず見るだろう。人類は一貫してそういう態度をとってきた。今日が歴史的な日となる。
シスラビとエルキタナソに乗る軍人は名もなき軍人だ。位としては少尉に当たる人物だ。プロトは激励のため彼らを訪れ励ました。
「今こそ帝国からの支配から逃れる時である。各々万全を尽くして戦ってくれ。貴殿たちのその家族には政府から莫大な援助は既に約束した通りだ。敵は強い。おそらく人類史上初の大掛かりな戦いとなる。規模ではなく性能という意味で大掛かりなのだ。検討を祈る」
プロトはそう言うと涙を流して彼らを見送った。
シスラビから発進した。
少尉達は陣形を組んで敵勢力を一層した。
何せ攻撃範囲が広いため歩兵など無意味と思えてくる。エルキタナソは後方についてバックアップにまわった。
「来たな。」
カイルも敵がGAIASのコピー機を出してきたことに気づいた。
そして三機のGAIASが戦場に放たれた。
そのGAIASにはAIが搭載されいろいろな実験で性能は上げられている。
ここに来て役者が揃った。
この戦いセンティーヌが勝つのか帝国が勝つのか。
どちらにせよ新たな世界が待ち受けている。




