第三十四章
死という単語はそれだけに冠詞を持つ。
deathをノタリコンすれは最後にTHがつくことがわかる。theに代表される冠詞はすべての名詞に付き監視が可能である。一般人の死はこのことから霊の加護の下行われ基本的には媒によって痛みは和らぐ。これが出来ないのが宗教的開祖達の死である。キリストや釈迦、ムハンマドは媒なしの死を経験している。この苦しさはもう言う事出来ないほどなのでこれ以上書けない。
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この国の情勢は逼迫している。国内に住む誰もが大戦争が始まることを予見していた。といっても今は国が亡国の状態にあるためひっそりと言っていただけである。国民は皆口を揃って外交でどうにかしろと言っていた。しかしそれは帝国の国民だけである。長い間虐げられてきたバイルの国民は逆に開戦を政府に迫った。プロトはそういった声を聞きながら無くしてしまった敵対心への喪失感と戦いながら日々過ごしていたのである。というのも帝国では既政者が政変によって変わってしまい今の皇帝はまた別の人間となったからである。その別の人間も報道を見る限り自分の意見は無さそうだしそれは皆気づいていることであった。
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カイルは国民の声を消そうと努めていた。アガティール帝国ではもう戦争は散々だという声が高まり政府に対して敵対する国家連盟との和睦をするべきとの声が高まっていた。いくらカイルが暴虐非道の輩でそれも前皇帝パーディアを上回るぐらいだと言っても国民の声は無碍には出来なかったのだ。
大臣達はそんな声に怯えて勝手に国際平和会議を開催することを取り付けてしまった。
カイルは怒り散らしたものの帝国の風向きは平和路線ということになっていたのである。それは国民の声であり絶対必須だったわけである。
国際平和会議は日程はかなりキツキツで組まれた。
勿論皇帝であるシンが出席することが望まれたがここでカイルが手を打った。カイルはシンの出席を認めたものの執政として自分も参加することを決め了承させた。カイルはこの会議において一泡吹かせてやろうと決めたのである。勿論敵対するセンティーヌにである。
センティーヌにいるプロトにもこの会議の招集がかかった。本当に平和になるのだろうか。開戦を望む声に水が架かる事態である。しかしプロトは知っていた。これは単にある事象に対する反発力でしかないことを。
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会議が始まった。
参加国は30カ国にもなった。
アガティール側は帝国に賛同する3カ国だけである。どれもアガティールに新体制が出来たことを理解した追従の仕方だった。歴史的には歴史的にはと伝統や慣習を重視した外交姿勢を取った。執政として皇帝の後ろにカイルという人物が付いていることも知っていた。しかし詳細については知らず普通の人物だと思いこんでいたようだ。
アガティールにとっての敵対国はこうして26カ国となった。どの国も小国で野蛮な国もあれば文明国もあった。口を揃えてアガティールの影響力の撤退とこれまでの歴史に対する謝罪と賠償を要求した。
アガティール側はこうした状況に笑って斜に構えていた。こんなもの茶番である。皇帝はそうは思わなかったが思ってしまったのはカイルである。
遂にセンティーヌの発言の番が回ってきた。
プロトは前に出て言った。
「アガティール政府に告げる。早々にこちらの要求を認め給え。でないと即時開戦となるやもしれんぞ」
プロトは少し古びた表現を使い要求した。
「ケラケラケラ」
後ろの方から笑い声がした。
ずっしりとした体格どこかで見たような格好。カイルだった。
カイルはマイクを握りプロトと対面する。
「久しぶりだな。あれ以来か。エソが死んで以来だな」
プロトは動じなかった。カイルを懐かしいとも思わずただ凝視していた。
「そちらに要求は認められない」
カイルは宣言した。
「望み通り即時開戦と行こう」
カイルの宣言に対し皇帝シンは動揺し慌てて修正しようとしたがカイルの部下がそれを抑える。
プロト言う
「やっぱりそちらの皇帝は傀儡か。カイルお前何を企んでる?」
それに対しカイルは
「俺は何も企んじゃいないさ。ただ酒飲んで酒池肉林といきたいところをお前が邪魔するって言うんなら容赦しないぜ」
会議はこれで決別した。
元々平和会議なんて名前をした虚仮威しだったのであるが重要な意味も含まれていた。国家元首同士が対話することが出来たという点である。
プロトはやはりカイルが噛んでいることを突き止め敵がカイルであることを認識した。皇帝に対する敵愾心から国をまとめ上げたが今はその敵が変わった。そして敵のカイルは畜生である。新たな光を見つけたようでますます士気が高まった。敵は敵のままだった。これだけでも大発見である。
アガティールはおそらく前回の戦いのように現代戦を仕掛けてくるだろう。しかしこちらにもそれに答える用意がある。どうなるか楽しみだ。




