第三十一章
AIは組織的に展開しゼロサムゲームを繰り広げた。
キャンサーはスピードはあったがAIによる予測攻撃に対応できず沈黙に至った。
この瞬間は現場にいたメディア関係者が撮影していた。そのことにより世界中に報道された。
カイルはGAIASの性能を高く見積もった。これならセンティーヌとの戦いにおいても十分圧勝出来るだろうと踏んだ。そしてあのプロトとかいう忌々しい奴を処刑し俺があの土地を併合してしまうのだ。かなり楽観的だったがこの戦いは奇襲だった。しかもAIによる援護もある。キャンサーという兵器の質も関わっている。キャンサーは本来数十機を運用してから作戦行動に当たる。今回の奇襲ではキャンサーの数はそれ以下だった。まだまだ判断材料はある。
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5機のキャンサーが沈黙してから1時間ほど経った。援軍が追いつき40機態勢となった。
アルクトゥールスの指揮官は先程のあまりの相手機の性能に度肝を抜かれたもののこれは議会から聞いていた性能と同じだった。しかもキャンサーはたった5機だった。まだまだ真の力は発揮していない。
キャンサーがなぜ西側諸国で最新鋭と言われているのかはっきりさせなければならない。
アルクトゥールスの指揮官は全機体到着するのを待って作戦を開始することにした。ここまでで半分が組織的に任務に就いている。何せ各国から送られてくる機体であるが故にいきなりの奇襲には到底時間がかかってしまうものなのだ。運悪くアルクトゥールスは憲法によって軍事力を持っていないことも作用している。
40機のキャンサーは到着後すぐにアルデバランとのドッキングを始めた。半分半分で始めて残りの半分は弾幕を撃つことでGAIASを混乱させている。
GAIASはいろいろと学習能力はあるものの実戦による弾幕に対応できずにいた。しかし当てるつもりのない弾幕は意味がないのかと思いきや計算処理において高負荷をかけ一時的にスペックが落ちた。
時間いっぱいとなった。残りのキャンサーも各国から到着し80機揃った。
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プロトはサザと共にテレビに釘付けだった。国際生中継ということもありやることすべてを忘れて集中して凝視していた。
5機のキャンサーが沈黙した早さについてサザといろいろと話している。
「あれは前回のトレス・カーザミーアの殲滅の時より性能が上がっていないか?」
プロトが率直に意見を言った。
サザも同意した。
やはり帝国の考えることは一歩我々の上を行くことを常に考えてしまうようだ。
最新のAIでも積んでいるのだろう。
すぐにラーミアと話をする必要がある。これに適応しなければならないからだ。
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弾幕による情報過多が起こった。
アルクトゥールスの指揮官はこれを読んでいた。
キャンサーの装填は300発を一回として行われ重厚も300門だった。80機からこれを喰らえばAIも処理速度が落ちることは明白だった。
いくら性能があろうとも量には叶わまい。
読み通り3機のGAIASは回避行動に移るようになった。弾の間を計算し避け続けていた。
アルクトゥールスの指揮官は勝機はあると思った。
4年前に出現し世界を恐怖に陥れた兵器GAIAS。恐る恐るるに足らず。
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AIは考えていた。
情報過多を解消しつつ最も効率の良い攻撃パターンを。AIには善悪は無い。
そして判断を下した。
第2都市アンカーにある幼稚園。ここは避難先としても利用されている。事前のデータでAIは知っていた。ここに攻撃をすればキャンサーのパイロット達は皆一斉守ることに専念せざるを得なくなる。
AIは速かった。回避行動に対しキャンサーは弾幕を張り続けた。そのパターンを学習し一定の間があることを学習したAIはその間を狙って幼稚園を砲撃した。
「ドーンー」
子どもたちの泣き叫ぶ声が周囲に聞こえた。
キャンサーのパイロット達は咄嗟の攻撃に動揺する。すぐに幼稚園周辺を守るために弾幕を諦めた。
その瞬間を待っていた。
AIは瞬時に近づき近接武器の刃をキャンサーに向ける。
キャンサーが一瞬にして2機落とされた。
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状況を見ていたカイルが立ち上がった。
「もういいだろう。AIは十分戦える機能を有している。多少弱点は見えたもののこれならセンティーヌも手出しはできまい。」
それを近くで見ていたワルター・セビウスもカイルに対し
「データ通りの活躍を見せてくれました。これで
世界征服がまた一歩近づきましたね。やはりあの島でのデータ取得が生きたようです。」
「よくやったワルター。お前の地位はこれで上がるだろう」
「ありがとうございます。カイル様」
*
突然GAIASは戦闘を止め離脱した。離脱の際のスピードはまるで別機体の様だった。一体どれほどのエンジンを積んでいるのか。アルクトゥールスの指揮官は思った。
今回の戦争は負けということになるのだろう。
アルクトゥールスとして負けたのでない。西側諸国連盟として負けたのだ。一層軍事力に力を入れる必要がある。西側の議会は紛糾した。
技術の差はあれど量でなんとかなると誰もが思っていた。しかしAIは即座に学習してくる。なんとかしないといけない。議会の元老の一人が口に出す。
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カイルは笑いが止まらなかった。次はセンティーヌ、お前たちの番だ。センティーヌと和睦しようとしていた皇帝シンも今は俺の手のひらにある。いずれ世界を手に入れるのもそう遅くはないのかもな。




