第三十章
ある日の午後その日は何も変わらないいつもの日だと思っていた。プロト達一向はシスラビの状態をチェックし整備士達と少し談笑した後いつも通り仕事部屋にいた。そこにラーミアが入ってきて少し真面目な話があると言って二人で話すことになった。
ラーミアは今回の戦争で帝国が何の策も用意せず無策で来ると本当に考えているのかとプロトに問うた。プロトは思案した後それは無いだろうと思いを打ち明けた。しかしどうであるにせよ戦争は避けられないだろうとの思いも同時に湧き上がり犠牲は付物だろうと一言最後に添えた。
その日ニュースをいつも通り見ていた。
プロトはサザと真剣にならざるを得ない内容が入ってきて身構えた。
アガティール帝国の西にある(つまりプロトがいたバイルの土地の反対側)アルクトゥールスという国に対し帝国がGAIASを送り込み新手の実験を始めたとの内容だった。
アルクトゥールスは貧弱な国家ではない。しかし西側諸国は東側の世界にはこれまで歴史的に登場していなかった。なぜなら王政を早い段階で捨て近代国家の道を歩んでおり我々東側と隔絶していたからだ。彼ら西側は武力を持つことを忌避し時代遅れだと考えていた。平和というのはここで使われるべき言葉なのか微妙である。真の平和はれっきとした国家暴力が為せるものである。彼らがいう平和は暴力なしの平和でありその内情はどういうものか東側にはわからなかった。
実情、こういう平和は自由を置き去りにする。
規制につぎ規制、規制で国が成り立ち驚くべきことに成人男性は皆去勢手術を受けていた。こんな有り得ない価値観をもった国は他に類がない。平和というのも驚かないだろう。そんな国にアガティールは実験と称してGAIASを送り込んでいた。
当然武力がない国にそんなことをして西側諸国が黙っているはずはない。しかしそんな事情を無視してアガティールは好き勝手やっていた。
GAIAS群は3機いつも通り展開していた。
アルクトゥールス第二都市アンカーを攻め落とそうと上空から実弾を艦砲射撃していた。住民は逃げ回っていた。実にとんでもないことだ。
西側に議会は直ぐに非難決議をして外交でどうにかしようとしていた。
しかし実権をもつカイルはこれを無視、武力行使をやめなかった。カイルはGAIASがどれだけの作戦能力をもつのか見極めたかった。
GAIASによる殲滅は3日続いた。都市はボロボロになり死者が増えるばかりだった。議会はここにきて西側での無抵抗作戦が意味を為さないことに気づいた。しかしそんなに早く西側諸国の他の国の軍隊はやってこない。
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その頃西側議会の元老たちはアルクトゥールスの都市アンカーが攻略されたことに驚き即座に軍隊を送ることを決定した。この軍隊は各国から集める有志軍としてアガティールへの対応に当たることになった。しかし長年東側との接触がなかっただけに今回の進軍に対し驚きを隠せず憲法改正まで議題に上がった。西側諸国が持つ軍隊は比較的中級で最新鋭のGAIASに対応出来かねると思われていたが元老たちの態度は動じなかった。なぜなら西側にも立派な兵器がありこれをキャンサーと言って西側にとっては強力である。この兵器は四輪駆動で敵地までの侵入速度が速い。ミサイルも小型化しかなりの量が搭載できる。地上からGAIASを迎え撃とうというのが元老たちの考えだった。しかもこのキャンサーにはバックアップシステムとしてアルデバランと呼ばれる飛翔装置が付属できいざとなれば空中戦も可能である。飛翔速度は計算したところGAIASはこのアルデバランには及ばないと判断した。
元老たちの決議で第二都市アンカーは放棄することになったがこの住民たちの犠牲は無駄にはしないとの思いから壇上会議室のなかで祈りが行われる。
しかし気を休めるわけにはいかない。アルクトゥールスの首都まで落とされるわけにはいかないとの焦りはいつだって残っている。早急にキャンサーを送り込みGAIASを退けるつもりだった。あわよくば最新鋭のGAIASのデータも一緒に鹵獲することを期待した。
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アンカーにGAIASが入って4日目のことだった。
前方に見えないが巨大な影が迫っていた。
いつの間に?GAIASのパイロットは思ったが
その瞬間の判断が遅れた。
影だと思っていたのはミサイルだった。
咄嗟に行動する前にAIが反応した。
AIは危険が迫っていることを認識してパイロットから操縦権を奪って自律駆動を開始した。
I have control.
アルクトゥールス国の既政者はキャンサーが戦場についたことに自信を得た。天も見捨てていない、と確信した。西側にとっての最新鋭兵器キャンサーが来てくれるなんてこちらの反撃がうまくいかないわけがない。アルクトゥールスの誰もが思った。
しかし現実は違った。
キャンサー5機は一斉に沈黙してしまった。
その正体は最新鋭AIである。




