二十七章
アガティールの新政府はセンティーヌ殲滅を全面に
押し上げた。アガティールは歴史的に見ていつだって他国を侵略しようとしていたが今回のこれはカイルという他国人による傀儡とみることもできる。政治が始まって以来カイルは皇帝であるシンにいちいち口出ししシンもそれに抗うことが出来ずにいた。それはカイルの内からの暴力からくるものであって惨劇を望む意思というものは人を畏怖させるものである。就任一ヶ月でアガティールで遊戯会が開かれることとなった。これは慣習になかったものだが新しい政府として官僚の絆を強めるために開かれたものだった。これを提案したのはカイルだった。その席においてつまらないことでカイルは皇帝シンを激怒させた。ただその怒りはカイルに影響を与えなかった。まるで怒ることがわかっていたかのように難無くその場を収め周りに皇帝の権力はカイルに及ばないことを示してしまったかのようだった。それ以来つまらないことで怒ることをやめたシンだったが日に日にカイルの態度が変わりどうすることも出来なくなってきた。
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GAIASが整備され反撃の狼煙が整った。
すぐにプロトは各国に呼びかけた。
シンというパーディアの養子には何の恨みも持っていない。しかし裏にはカイルがいる。あのカイルだ。カイルなら何をしでかすかわからない。
態度を保留するわけにはいかない。
全国民の前で呼びかけた。
「帝国は体制が変わった。しかし裏にはあのカイルが影を潜めている。誰でもよい。立ち上げるものは志願兵として協力してくれ。」
国民からは一定の理解を得た。中にはカイルが嫌いで志願したものも多数いた。しかし考えようによってはアガティールは内部崩壊を起こすのではないかと考えるものもいた。事実シンはマスコミの前で元気がなさそうだしそれにカイルが実権を握るとみる報道もあった。
しかしシンはそういったものは噂にすぎず以前として帝国の力は強大でありいつ侵略されてもおかしくないと訴えた。
GAIASのパイロットは無名の者が選ばれた。とりわけ運動能力が高いものが選ばれとくに戦績を上げたものを就かせることはなかった。センティーヌは戦争の歴史とは程遠く古くから貴族による政治のせいで他国に諂ってきたからだ。
GAIASは自立型兵器だが一転してパイロットの空間認識能力を必要とした。この点適任なのはプロトだった。GAIASは整備されたものが4機。三人については無名のパイロットが搭乗するとして残りの1機体はプロトが乗るべきだと声が上がった。指揮官自ら乗り込むことで全体の趨勢を把握し指示を送り込む目的があった。それについてはプロトは承諾した。ただ念の為被弾しないよう援護用として師団背後に構えるとの約束が交わされた。このプロトの乗せるべきだとの意見はサザが行った。サザはできるだけ大将であるプロトには前線に出来欲しくないとの思いがあったが何しろ敵には今も変わらなければ3機のGAIASが存在する。それに対抗するには司令機体としてプロトに乗ってもらうのが上策と考えた。
最後にGAIASの名前について話し合いが持たれた。
開発者であるラーミアは違う名前にしたほうがいいいのではと上告した。それに対しサザも同意見を出したためGAIASのネーム変更が行われた。新しい新型兵器の名前はシスラビ。システム‐ラビットの略だった。うさぎの長い耳のように諜報し偵察によって勝つという意味からつけられた。何しろこの兵器の攻撃力は絶大で一撃必殺に近いところがある。そういった意味において1機多いセンティーヌには武がありそうだった。他国はそんな状況をよく見てか支援に渋りはなかった。どの国もセンティーヌならある程度やるだろうと見込んで多額の金を出し合った。しかしそれに反する国もあった。小国であるリンドである。この国はアガティールを極端に恐れてきた国であり元々アガティール寄りの政策とも取れることをしてきた国だ。
彼らは技術が劣るのではないかと不安を口に出した。
それについてラーミアが反論した。
「このシスラビはロールアウトした時からGAIASの性能と同程度かあるいはその上を行くものと思っています」
開発者であるラーミアがそう云うのなら間違いない。それを聞いてリンドの代表団も一旦は落ち着いた。それでも帝国からの恐怖からか資金の拠出は見送ったのだが。
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あとは宣戦布告だけだった。
問題はどのタイミングで行うかだ。
異常に世界は戦争を忌避する時代となっている。
大義名分の問題を解決しない限り世界の援護は得られない。思案にふけたがそのことはとりあえず先延ばしした。向こうからボロを出すと読んだのだ。プロトは指揮官として盤石の体制を築いた。




