二十六章
建国祭当日となった。各大臣以下政府の閣僚たちが次々と現れてはなにかを話している。そんな中端っこの片隅にカイルとその部下がいた。この部下はカイルを慕って彼が選定ナイトになる前からついてきている人物だ。一見よそよそしくしていたカイルとその部下だったがやがて気を張り直し堂々と建国祭に紛れ込んでいた。
カイルは部下に対し
「さすがに俺様でも暗殺となると緊張するぜ。場の雰囲気にのまれるというか。」
などと言っていたがそれはそうだろうう。カイルがしようとしていることはクーデターであり相手は皇帝パーディアである。パーディアは老体で病床の身とはいえかつてはその武勲でよく知られていたのである。
建国祭も中盤を迎え、儀式的なことが中心となってきた。各大臣等が決められた作法で式典に参加しいよいよ選定ナイトがパーディアのいる別室にそれぞれ謁見し誓いを立てる儀式となった。
カイルはワクワクしていた。この男はバイルにいた頃から人とは違い、権力欲と闘争が好きだった。とりわけ闘争に至っては手段を選ぶことはせず最終的な解決策、暴力によって体制を変えることがしょっちゅうだった。
カイルは選定ナイトのNo.6だったので最後だった。その瞬間が訪れた時カイルは部下に
「じゃあ行ってくるぜ。明日からは安酒からは卒業だ。」
部下もそれに対し目を輝かせて見送った。
カイルが部屋に入った。
皇帝は冠を被り槍を立てて座っている。あくまで儀礼的なものだ。
カイルは手順通りにやった。
まず祭壇に対し礼をしロウソクに火をつけた。
皇帝はまだ喋らない。
選定ナイトの証である銘板を皇帝に見せると皇帝は「よかろう」とだけ喋った。
最後に槍を顔の前にかざして終わりなのだがその時事態が動いた。
カイルは持っていた短剣の鞘を抜きパーディアの首めがけて突き刺した。
その瞬間パーディアは何もわかっていなかったらしい。ただ一言、
「何事か!!」」
とだけ激昂していたがカイルは耳には入らない。
「ゲホ!!」
一瞬でパーディアの命は尽きた。密室だったこと他の選定ナイトは儀礼を終えていたことも影響し誰もまだ気づいていなかった。
カイルの笑みは止まらなかった。
建国祭にいたシンが一人で部屋に入ってきてパーディアの死を確認した。
「カイルよくやった」
シンは一言だけ呟いて哀愁に暮れた。
いろいろあった。元々親子ではない。色々思うところはあるがこれでいい。
ただカイルの方はそれに対し反応を見せなかった。
カイルはもうこの時すでにシンをどのように恫喝し権力を実質的に握るかだけを思案していたからだ。
カイルはそしてセンティーヌを潰す。
数年前負けたあの男。プロトとかいう男を嬲り殺すまで。カイルの劣等感は取り分け悪魔のように志向するだけだった。
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翌日、皇帝パーディアが死んだことが市民に伝わった。良い政治だった。いい人柄だった。人々は盛んに噂した。そして次の皇帝には養子であるシンが就くのだろうと皆わかっていた。
すぐに政治機構が再編された。
パーディアについていた選定ナイトはそのまま継承した。ただ一つ変わったのは選定ナイトのNo1をカイルにしたことだった。これはカイルの強い希望で実現した。大臣以下もそのまま職を継続した。しばらくは混乱があると思っていたがそんなこともなく無事に国葬も終えそのままの世界が続いた。
島国にいたプロトはニュースを以てパーディアの死を知った。それは衝撃だった。一体誰が?と言う思いと本人の錯綜がしばらく続いた。これで終わったのかと思った。死んでしまった幼馴染のユンにこれで報告ができると思った。どんな形であれとりあえず終わったよ。そう思った。しかしまだ続いていた。テレビに写ったのはかつて選挙で敗れてプロトオに負けたカイルだった。
カイルは選定ナイトになってコメントを求められていたがその開口一番
「センティーヌを潰す。シン様の下であのプロトとかいう男を倒すことが取分け我が国第一の課題です。」
帝国アガティールと和平を結ぶことも考えてはいたプロトだったがあわよくその期待は裏切られた。新しいアガティールはこちらに対し敵意を存分に向けていた。
政治的混乱が敵国であったとはいえ時間は十分にあった。プロトの下には整備され新調されたGAIASが並べられていた。技術のブラックボックスは発案者であるラーミアが復元していた。これでもう戦える。GAIASによって軍事革命が置きてから5年、センティーヌはようやく帝国と戦えるところまで来たのである。




