二十三章
カイルの行動は馬鹿げていた。
選定ラウンズに選ばれてからというものまるで敵をつくるかのように群れてどんどん自分の手駒としていった。その引き寄せはまるで渦のようだった。
最初皇太子であるシンは大目に見ていた。しかし話してみるとそこまで悪いやつとは思えなくなるような不思議な感じがした。シンは今、皇帝に代わり政治を執っていた。そんな中で政治に対して不安も抱いていた。自分に務まるだろうかという不安だ。そして国内の権力争いに対しても危惧していた。皇帝パーディアには息子が一人しかいない。シンだ。
そんな胸中を察してかカイルはシンに温かく近寄り巧みに言葉で誘導した。明らかにおかしいのはわかるのだがカイルが持っている独特の温かみで悪さがだんだんと心地よくなってきた。
その日いつものように執政をとり部下達が帰った頃
シン一人だけになったと思われたところにカイルがやってきた。その傍らにはなんと12機団の将軍ワルター・セビウスがいた。12機団はもともと南部ヤマトの警察機構だった。それが最近になってアガティールでも参考にされ取り入れた後初代将軍にワルター・セビウスがなった。
自分勝手で不本意なことがあるとキレるセビウスは
同じく心に悪を覗かせているカイルに従順となり今は彼に従っているようだった。
シンはカイルの隣にセビウスがいることにひどく驚いた。
「カイル、セビウスまで取り込んだのか?」
それに対しカイルは意味深長に
「やだなぁ、取り込んだなんて。我々は一策講じにきただけですよ」
と答え早々と荷物を下ろした。
カイルの話は長かった。荷物は剣だった。
カイルは長々とこれからのことを語った。
皇帝パーディアは病床についている。彼は立派だがその分粗も多い。前回の戦いでは今はセンティーヌとなったバイルを徹底的に潰しておくべきだった。現状彼らが力を持って反抗してくる可能性も無きにしも非ずだ。パーディアは病を言い訳にしてセンティーヌ殲滅計画を反故にした。またガイアスの開発者であるラーミア・シュルタンの存命が大事だとしてセンティーヌ奇襲計画もまた反故にした。こんな皇帝に玉座が務めるとは思えない。
「で?カイル。私に何をしてほしい?」
シンは淡々と質問した。
カイルは今がそのときだとハキハキと目を輝かせながら
「殿下。皇帝暗殺を私にお命じくだされば今すぐにでも肉の欠片として献上できます」
カイルはとんでもないことを言った。
それなのに怯えずにまだハキハキしている。元々バイルから来た貴族だということをシンは知らない。それどころか国中の人間がそのことを知らない。
カイルの目的が何であるにせよ皇帝暗殺は話が行き過ぎている。
シンはしかし現状、帝国が腐りきっていることにも気づいていた。内政は乱れ、官吏による汚職腐敗が進みすぎている。金さえ払えばどうとでもなる世の中はパーディアがつくったものだ。そしてシンはパーディアとの仲が頗る悪い。怨嗟と言っていい。元々養子として連れてこられたものだし何より弟が死んでいる。その恨みは計り知れない。
カイルはまだ飄々としていた。
考えてみれば良い計画かもしれない。カイルの自信満々な顔を見て考えが変わってきた。それどころかその案がとても自然なことのように思えてきた。やはりカイルは一味違う。人に対して物怖じしないところやその心意気は目を見張るものがある。
再度考えてもやはりシンの直感は固まったままだった。
そしてその場で
「カイル。面白い話じゃないか。是非実行してくれ。私も皇太子から皇帝になりたいと思っていたところだからな」
シンはカイルがそうであるのと同じように自信満々でカイルに命じた。
こうして帝国内部で裏で皇帝暗殺計画という物騒な計画が始まったのだった。もちろんセンティーヌにいるプロトたちはアガティールの内情を知らないままだった。こうして実現するかわからないがパーディア対プロトの戦いがシン+カイル対プロトの戦いへと移っていくかもしれない現状世界となったのだった。




