第十九章
プロト達は開発拠点にいた。
島国にある誰も近寄らない土地を見つけたのが位置年前だった。そこから資材を搬入し簡易的な基地を作り研究開発拠点としたのだった。そこにはラーミアの姿もあった。
「これで出来そうですか?」
プロトの問いかけにラーミアは頷いた。
「最新の電子機器とはいえ基本的には古いやり方が基本となっている訳。それでも細かな新しい技術はあるからそこら辺は外国の製品を利用すればなんとかなるのよ」
ラーミアは端的に答えた。
ラーミアはプロトたちに助けれたようなものだった。元々前の国では研究者たちに十分な手当はなかったしあの国は人権後進国だった。そこで悩んでいたところにプロトの手が差し伸べられたと解釈していた。プロトにとっても重要だった。ラーミアの力がなければアガティールに対抗できないしそうだからこれはWin-Winの関係だった。
しかしこのような関係にももっと心情的に一致する出来事があった。二人の関係はますます近くなったのだ。それは3日前だった。プロトがいつものように仕事を終えるとラーミアが声をかけた。
少しご飯にでもいかないかという誘いだった。そこでプロトはユンの話をした。幼馴染の間柄だった彼女との思い出だ。ユンは殺された。アガティールに。それに対しラーミアも同情しそして驚いた。ラーミアには弟がいてその弟の年齢がユンと同じ年だったのだ。そして弟はアガティールに殺されていた。意味のわからない嫌疑を立てられ処刑されたのだ。二人には共通点があった。どちらもアガティールを憎んでいる。それだけで救われたような気がしたのだった。
開発に関し問題も出てきた。
外国からの最新の半導体が不足しているというのだ。自前で作るわけにもいかず困っていたところラーミアの部下の独自のコネで解決できた。
これで大体の手段が整った。
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アガティール帝国の皇族の関係というのは歪だ。
はっきり言って仲が悪い。
元々パーディアは貴族から選挙で皇帝になった身だ。この国では皇帝は選挙で選んでいた。しかしパーディアの代にパーディア自身が世襲を表明して常識は変わってしまった。
パーディアの息子のシンはパーディアと仲がかなり悪い。元々養子だから仕方ないといえば仕方ない。
皇帝パーディアが選挙に選ばれる前、貴族だった頃にアガティールの慣習であるエラキトと呼ばれる制度によってシンはパーディアの養子になった。エラキトというのは裕福な貴族が身寄りのない子どもや孤児を引き取って育てるというアガティールの慣習である。そこでシンは、というより厳密に言えばシンとノギというシンの弟がパーディアの養子となった。ノギとシンは同じ孤児院で育ち仲良く暮らしていた。実の兄弟である。孤児院では盗みや暴力といった非行が目立ちそんな中でもシンは上手くやっていた。ノギは病弱であったがシンが上手くサポートし二人の仲は極めて良かったのだ。しかしあるときエラキトによりパーディアの養子になることが決まりふたりとも引き取られた。このときはまだパーディアがまさか皇帝になるなんてことが起こるとは思ってもいなかったのだ。パーディアは二人を引き取った時、齢は50を越えていた。
最初は良かった。二人にとって。しかしパーディアは病弱な弟の方を毛嫌いするようになり終いには無視を決め込むようになった。それがどんどんエスカレートしノギに対し一切の食事を出さないなどの行為を行った。3ヶ月が経った頃だった。兄のシンがその日普通に起きて習い事に通おうとしていた時ノギの部屋でノギが亡くなっていることに気づいた。
遺書が置いてあり兄さんごめんとだけ書いてあったのだ。
*
この時以来、シンは義理の親であるパーディアを恨むようになった。シンはまるで機械のように様々なことを学習させられ弟のことも忘れるように仕組まれたプログラムのように毎日が忙しかった。シンはそれでもパーディアの意思に反しノギのことをずっと考えていた。毎日部屋の仏壇に供え物をし写真を置いてノギを弔った。
こういう過去があってそれから10年後、アガティールの今上皇帝はパーディアのままだった。パーディアにはシンの他に息子はいなかったのでシンが皇太子として皇位を受け継ぐことになっている。パーディアは70近くとなり病に伏せるようになった。
シンはざまあみろと思っていた。さっさと死んでくれと願っていた。そんな矢先に属国である南部ヤマトで新型の殺戮兵器が開発されたのだった。その名前はGAIAS。三機が実機として配備されそれはアガティールが保有した。その他の後発機は技術者(南部ヤマトの)が海外に亡命したことにより作れないという状況だった。技術は完全にブラックボックスであり開発責任者はラーミア・シュルタンという女性だった。シンはこのとき皇太子だったがパーディアの容態が優れず代わりに政治を執っていた。シンはラーミアに一度あっておきたかったが時はすでに遅すぎた。ラーミアはセンティーヌというバイルから名を変えた国の主、プロトと接触しており既に亡命していた。シンは焦った。それだけではなかった。何年か前に世話係をしていたカイルという男がアガティールの政治の世界で台頭しており右大臣にまで上り詰めていた。シンにもよく口出しをしてきておりパーディアがいないことを口実に、やれ養子だの、若いだのといろいろと干渉してきて悩みの種となってきていた。
パーディアのことは嫌いだったシンだがいざパーディアがいないことを想像してみたらカイルという男がいきなり王位を簒奪してきてもおかしくはない。実際かなり怖かった。そのことで日夜眠れなかった。カイルには政府内で一定の信者が出来始めておりこれが案外強力だった。
カイルの提案はこうだった。センティーヌが反逆を起こすかもしれない。その前に潰してしまおうというものだった。しかし人質同然のラーミアや技術者がいる。そういう意見が上がった。構わない。其奴らごと焼き払ってしまえ、それがカイルの案だった。
*
アガティールの技術者がGAIASのブラックボックスを解析していた。ときに精神連動する部分の解析に難をきたしており情報量は予想よりゼロが何桁も違った。こんなものを開発するなんて、誰もが思った。そこの現場に右大臣であるカイルがやってきた。
「いいか、お前ら、早く技術をものにしろ。最悪、出来なければお前は死だ。」
ハキハキととんでもないことを吐いてきた。カイルのやり方はいつも恐怖で人を縛るものだ。
「はやくしないと、ラーミアとかいう技術者がまあ最低でも似たような技術を創り出して我が国に反逆をするだろう。それを阻止するために君たちがいるのだ。」
アガティールの技術者は焦っていた。自分たちが知らない公理があるのではないかと思うぐらい何かが欠けていた。
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待ちに待った最終戦争。センティーヌとアガティールによる技術開発の行方、どちらが優位に立てるのか。今のところ実機を持っているアガティールだろう。しかしプロトには負けれらない意思があった。




