第十章
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この件は吾輩の衆生(霊)が言っても絶対にわからないと言ってはいたものであるが何とか解説出来そうである。霊を従え霊の影響力を地上に現すためにはsilverのことを考える必要があるそうだ。昔から食器などに銀製品を使っていたのは英気を霊から取り込む為のものだったと容易にわかる。食事だけではない。例えば吾輩が新たな経文をORIGINとして天から降ろそうとするとき必ずsilverの力が不可欠である。これは銀の幕でありこうやって帳に似た霊が現実化する要素を使わないことには長い経文を書き出すことは出来ないのである。昔は文人はこのように物を書いていたが一部の鳩摩羅什などの天才は一句一句正確にこうやって霊の言葉を地上へと下ろしたわけである。でなければこんなに長く人々に公布される理由もないのである。妙法蓮華経如来寿量品第十六自我得仏来
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太陽を見てみればわかる。瞑想が幸せを生むのはその無に起因する。太陽のように照れを生じさせるものは人を反らせる。その中を考えれば照れを生むだけで中には何も無いことがわかる。光というのは人を惹きつける一方眩しくて目を反らせるのだが中には何も無い。
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トレスカーザミーアでの暴動はまだ続いていた。
各地へと波及した暴動だったがそれは首都周辺では鳴り止まぬことはなく、連日爆弾や銃を使ったテロが横行した。これに危機感を抱いた帝国はすぐに鎮圧部隊を送っていた。パーディアは自ら戦闘部隊の指揮を取り徹底的に破壊の限りを尽くした。
南部ヤマトはアガティールの支配下にいた。
南部ヤマトのとある研究機関である実験が行われていた。開発コードN603GAIAS。人型決戦兵器として高い選択能力を持った当機体は機動性に優れAIなどにも負けぬほどの倫理観を持ち誰でも乗れるインターフェースと人の運動野を利用した空間把握技術により思うように機械と人の意志をつなげることができるものだ。南部ヤマトで開発されていたがこの技術は世界を変えるものとしてすぐにパーディアの耳に入りパーディアが接収したのだった。
パーディアは優れた技術は先に使わなければならないと考えていた。その後の世界のパワーバランスを考えるとそれは政治家としての勘だったのだがこれが悲惨な結果を生むことになる。
トレスカーザミーアは中堅国だった。
長いあいだの政治腐敗を経て今はウーラーという人物が統治している。中にはアガティール帝国に反感を抱く人材などが流れついてきているという背景もあった。パーディアはそのことを危惧していた。どうせなら殺してしまおうという思惑が強くなって頃に起きた暴動だった。作戦が始まった。
まず投入されたGAIASは三機だった。海側から制圧入り荒野を抜けすぐに都市に爆撃を開始した。
制空権はレーダーによりトレスカーザミーア側に危険を知らせていたのだがGAIASはレーダーにかかりにくいステレス性能を備えていた。
それでも肉眼で視認した兵士たちはすぐに応戦に入ったのだった・まず最新のH-23ヘリコプターで銃撃を開始した。GAIAS側は驚くべき飛行能力で低空を飛行し回避した。これには兵士たちも驚いた。なにせ迎撃に向かったヘリは9機だったからだ。すぐに蜂の巣になると思っていたトレスカーザミーアの兵士は状況が違うことにようやく気づいた。
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何も知らないバイルでは最後の恋の季節が咲こうとしていた。サザは31歳で自分はずっと独り身で生涯を終えるものだと思いこんでいた。なにせ軍人だから長生きは出来ないものだと思っていたし戦争につぐ戦争で恋なんてものはこの世界では流行っていなかった。どこの国も親が選らんだ相手と結婚するのが慣わしだったからだ。
それがどうだ。俺も目の前には若い女がいる。
サキというトレスカーザミーアからきたこの女性は先日俺に連絡してきてまた会いたいということだった。場所の指定先は海の家だった。海にきたのは何年ぶりだろうか。俺は勝手も知らず呆けていた。
「サザさーん」
振り向くとそこのは先日図書館で会った女性がいた。偶々あったものばかりだと思っていたが今現実にここにいる。
「待ちました?」
サキという女性は水着を着ていた。その上にピンクのパーカーを着ていて手にはグラスを持っていた。
「飲みます?」
「ああところで海にでも入るつもりなのかな?」
「当たり前じゃないですか。ほら家の国って沿岸線が短いから夏も短いんですよ」
「そういえばトレスカーザミーアはそんなところだったな」
「それよりサザさん。ひどいじゃないですか。電話には出てくれたけどその前に5通もメールしてるのに全部無視。私泣いちゃいますよ」
「軍人だからな。仕事以外のメールは基本見てない」
「あー。そういうところがお固いんだ。今日はもっとはっちゃけましょうよ。」
そういってグラスを受け取らされたサザは柑橘系のジュースをストローで飲みしばらくサキを見つけていた。だがそれはバレないようにだ。なにせ胸元はパーカーと同じ色のピンクのビキニでなにせ胸が大きかった。サザは童貞というわけではないがほとんどそんなものだったのだ。
サキは仕草がいちいち可愛かった。カニが出たとかいってサザに抱きついたりジュースが日光で暖かくなったとかいってサザの分まで飲んでしまったりでいかにも明るい女性だった。女性というのは若いうちのほうが妊娠率は高い。そのため世の男性は若い女を狙ってしまうというのだがサザもその魔法にかかりかけてしまったのだ。だが今現在トレスカーザミーアでは帝国による新型兵器で都市が蹂躙されバイルにもその影響が及びかねないだろうし国防の必要性を考え直さなければいけない情勢に自然となるだろう。だが今この現在その情報は入ってきていないしサザも初めての青春に目が充血するほどヤバかった。
「どうしたんですか?」
サキが聞いてきた。
「いやなんでもない。」
「遊ばないんですか?」
「いや俺はいい」
そういうとサキは海の方へ入っていき浮き輪で浮いているのだった。
時間は経ち夕方になった。
「楽しかったー」
「そうか。それはよかった」
「また遊んでくれますよね」
「お、おう、。」
そういって海辺沿いを歩いていた。サキはタクシーを呼んでいた。
「じゃあこのあたりで」
サキがいうとサザも答えた。
「じゃあさよなら」
それで今日は終わりかと思ったら
サキがまだ話があるようだった。
「サザさんってメール見ないんですねー。最悪」
「それは悪いな。俺の習慣上のことだ」
「じゃあこれ渡しとこ。」
そういってサキはサザにあるものを渡した。
それはサキの名刺だった。
名刺にはテレビ局アナウンサーと肩書があった。
「すごいな。アナウンサーしてるのか。知らなかったよ。」
「テレビっていっても地方のアナウンサーですよ。そんなことはどうでもよくてほらここに」
そうサキが言うとサキが住所の欄を指さした。
「ここが私の住んでるところです。
こんど遊びにきてね」
そういってサキはサザほ頬にキスをした。
タクシーが来た。
それは去り際のことだった。
だがサザにとっては衝撃的だった。
サキが帰ったあともサザがサキの家で一体全体何をするのかを1人悶々と思案していた。
さっき受けた頬のキスのことでも頭がいっぱいで
完全に第三者からみたら女性優位のメロメロ作戦だということは明らかだった。
「あんな女性いるんだ。」
サザが1人呟いた。
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情勢は変わりつつある。アガティールへの反旗かアガティール一強体制の完成か。
どちらにしても世界は動くのだった。




