どうかごゆるりと
時は戦国。一人の男がいた。
名は礼蔵。妻の名は理沙。
「この戦は負ける!信じてくれ!」
「愚か者が!殿が負ける!?貴様!自分が何を言っているか分かっているのか!?」
「どうか夫を連れていくのは止めてください!分かりました。戦に勝つために私が西洋の未来の戦術をお教え……」
「やかましい!妖魔めっ!礼蔵!どうせこの妖魔に余計な知識を入れられたのであろう?夫婦そろって打ち首にしてやるっ!」
理沙は何でも知っていた。
過去の事から未来の事まで何でも。
恐竜、ピラミッド、進化論、スマホ、AI、宇宙移住。明治大正昭和平成令和……。
だが彼女の言うことは誰にも信じられず、両親にすら嫌われ、蔑みの意味で『妖魔』と呼ばれる様になった。
彼女の理解者は山奥の坊主と礼蔵だけだった。
礼蔵は逆に何も知らぬ男だった。
理沙の言うことを全て信じ全て受け入れてくれた。
理沙は礼蔵を心から愛していた。
(私たち夫婦は殺される。でも夫と一緒なら怖くない。私には分かる。平成。この時代に私たち夫婦は生まれ変わり再会する。そして永久の命を得る)
「あなた『平成』で会いましょう」
「おう。なんの事かは分からんがそこでまた会えるのだな?」
こうして礼蔵と理沙は首を跳ねられて死んだ。
二人の卒塔婆が二本建てられた。
坊主が卒塔婆に祈っている。
(……どうか。どうかあの世では夫婦二人でゆっくりしておくれ)
戒名……霊にすらなれなかったという意味の『無知男霊無』
知恵が有りすぎた故に魔と呼ばれたという意味の『知恵与魔理沙』
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そして平成。
生まれ変わった二人はまた出会い。
令和の今日まで私たちに知恵を与え続けてくれている。
その事はみなもご存じであろう?
「こんにちは。レームよ」
「マリーサだぜ」
「今日は戦国時代の愚かな戦について語っていくわ」
「あーあれな。あれは本当にクソだったと思うぜ。必死で止めたのにダメだったんだぜ」
「かわいそうに。それではみんな」
《ゆっくりしていってね!》




