EPISODE FINAL
「んっ・・・・・・」
目が覚めると見知った天井が見え隣には知らない男性が座っていた。
「目が覚めたかね?」
男性は優しく声を掛ける。
「あなたは?」
「私は竹本蓮司、この支部の新しい支部長になる者だよ」
「新しい支部長?」
「そうだ、前の支部長の代わりに私がこの支部にいる少女達の新たな支部長になる、突然ですまないが話はもうついている」
「そうですか、あの、他の人達は?」
「もしかして、戦場に出た子達の事か? すまない、君以外は」
「そうですか」
そう答えた八波は竹本から目を逸らし天井を見る。
「八波君、目覚めてすまないがこれからの事を話したい」
「これからの事ですか?」
「ああ、これからこの支部は壊す事になり新たな場所へと移動する事になる、今他の子達は準備をしている」
「はい」
「そして、新しい支部での君の仕事だが、戦闘には参加せずに私の秘書をして支えてもらいたいと思っている」
「え?」
「君は十分戦った、だが君の身体はもう限界だ、だからこれ以上君を戦わせるわけにはいかない」
「私は、もう役に立てないのですか?」
「君は十分過ぎるほど役に立ってくれた」
「でも、私が、私が頑張らないと」
八波が無理をして起き上がるがふらついてしまい、竹本は八波を支える。
「君はもう十分頑張った、だからもう頑張らなくていいんだ、もう戦う必要はないんだ」
「私は、もう戦わなくていいんですか?」
「そうだ」
「・・・・・・ごめんなさい」
謝罪の言葉を口にした八波は涙を流す。
「ごめんなさい、ごめんなさい、戦えなくなって、役に立てなくなって、ごめん、なさい」
涙を流す八波を竹本は優しく抱きしめ八波の頭を優しく撫でるのだった。
それからしばらくして八波達がいた支部は取り壊され八波達は新しい支部に引っ越し新たに竹本蓮司を支部長にして活動していた。
「どうかな、新しい衣装の着心地は?」
「はい、動きやすくて良いですが、一つ良いでしょうか?」
「何かな?」
「どうして、制服のような衣装なのですか?」
八波が自分の着ている衣装を見ながら竹本に問う。
「そうだな、前々から国ごとに衣装は統一させた方が良いと思っていたんだ、当然この施設についてもね」
「どう言う事ですか?」
「今までこの施設の中はまるで戦いにでも備えるかのような感じにできていたが私が支部長になったからにはこのようにしたいと思っているんだ」
そう言い竹本は八波に資料を見せる。
「これって、基地内を見た時も思いましたが、まるでどこかの大きな学校みたいですね」
「そうだ、学校のように設計したのさ」
「そうなのですか、でもどうして?」
「未確認と言う存在がいなければ君達は本来学生として楽しい人生を歩んでいたはずだ、それなのに命を懸けた戦いをしなければならない、これまでもたくさんの少女達が犠牲になってしまった、せめて楽しい時間を過ごしてもらいたい、だからこのような感じにしたのさ、いわば私の勝手な自己満足かもしれないがな」
「いえ、良いと思います、戦わなければいけないのならせめてそれ以外は楽しいと思える一時を得たいですから、だから良いと思います」
「そうか、さてこれから君には私の秘書として働いてもらうがついて来てくれるか?」
「お任せください、完璧にサポートします」
「それは頼もしい」
「あの、一つよろしいでしょうか?」
「何かな?」
「ここが学校のようだとおっしゃるのなら支部長と呼ぶのはおかしいですね」
「ふむ、確かに学校で支部長はおかしいな、なら他の呼び方を考えるか」
「そうですね、学校なので理事長はどうでしょうか?」
「悪くないな、ではこれから私はこの支部の理事長だ」
「はい、よろしくお願いします、理事長」
それから八波は理事長の秘書をしながらの日々を過ごしていき、新たな仲間も増えていった。
「この力を手に入れる前から剣の腕を磨いて来ました、他の少女達に剣の使い方を教えられます」
「真由ほどじゃないけど、私も剣が使えるから、少しは教えられる」
「安心しろ指揮官、この私が来たからには戦場での犠牲など一人も出さない」
「楓は司令塔としての才能は確かだから期待できますよ」
「私が未確認を全て倒しますよ」
「私も蘭華様と一緒に未確認を倒す」
これまで中々現れなかった戦闘向きのレアスキル持ちが増えて来て八波のいる支部にもたくさんの戦闘系のレアスキル持ちが入って来ていた。
「新しく入った彼女達はどうかな?」
「はい、夜見さんは銃の扱いに長けていてしかもスキルで相手の弱点を見抜く事ができて未確認との戦いはやりやすくなっていますし、菜乃さんのスキルもとても役に立っています」
「頼もしい限りだ、それと例の子はどうなっている?」
「はい、現在捜索中です、しかし本当によろしいのですか? 右京さんに調べてもらいましたが相当な経歴で何よりも普通じゃありません」
「確かにその通りだ、だがそう言う普通じゃない経歴を持っているからこそ、今の我々には必要なんだ、菜乃君のスキルのおかげで総帥の邪魔になる存在を我々の中に紛れ込んだネズミを見つける事ができた、後は彼女を我々が見つけて捕らえる、そして彼女と交渉をする」
「わかりました、右京さんがもう少しで現在の居場所を見つける事ができると言っていました、見つけ次第すぐに動きます」
「うむ、頼むぞ」
八波はもう戦う事ができる状況ではなくなったがそれでも自分にできる事をやり理事長を支えていくのだった。
「どうかな?」
基地から離れた場所に別の建物がありその中に入った理事長はその場にいる玲子に問いかける。
建物の中は基地ほど広くはないが中はかなり設備が整っていた。
「良い感じよ、成美ちゃんと桃花ちゃんのスキルのおかげで完璧なのができたしね」
「と言ってもまだ試作段階だし戦闘で使えるようになるにはまだ練習とか必要ですけどね」
「私も何とか調整しましたが、それでもリハビリとか戦闘で使えるかのデータを取ってそこからさらに改良の必要があります」
「それでも、君達のおかげで彼女も復帰できる目処が立ちそうだ」
理事長は部屋の奥に行くとそこには一人の少女が座っている。
「さて、君の義手や義足を作ったが調子はどうだね?」
「良い感じです」
理事長の問いに少女は両腕の義手を閉じたり開いたりし両足の義足を上げたり下げたりしながら答える。
「これからさらに未確認との戦いが激しくなると考えられる、君は本当にそれで良いのか?」
「ええ、最初からあの子を助けたいからした事なんです、だから戦える力が手に入るなら地獄でも付き合いますよ」
そう答える少女の目は覚悟が据わっていた。
読んでいただきありがとうございます。
これで完結です。
引き続き「スキルホルダーの少女達」もよろしくお願いします。