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EPISODE 3

 未確認との戦いは終わりが見えず、八波は今日も未確認との戦いを続けていた。

 しかし、その度に八波の身体は限界を迎えていた。


「はあ・・・はあ・・・」


 医療室に向かっているが歩く足も重く息も絶え絶えになり目の前が歪んで見えるようになる。


「うっ」


 八波は途中で意識を失い倒れるのだった。


「・・・・・・」


 目を覚ますと天井が見える。


(私、意識を失ったの?)


 そんな事を考えながら辺りを見渡すと何やら言い合っている声が聞こえる。


「いい加減にしなさいよ!! これ以上は本当に命の危険があるの!!」


「あいつ自身がやると言っているんだ!! 口出しするな!!」


 玲子と支部長が言い合っているが今回は意見をするのは玲子だけではなかった。


「支部長!! 私も八波さんだけに任せるのはもう嫌なんです!!」


「確かに私達は八波さんに比べたら弱いです!! でも、八波さんだけが危険な戦いをしているのが我慢できません!!」


「八波さんほどじゃなくても私達だって戦えます!! だから八波さんを休ませてください!!」


 玲子だけでなく他の少女達、主に戦闘系のスキルを持った子達が強く八波を戦わせないように、代わりに自分達を戦わせるようにと強く志願する。


「黙れ!! お前達が戦っても無駄死にするだけだろ!!」


「それでも良いです!! もう八波さんには戦って欲しくありません!!」


「黙れと言ってるだろ!!」


 支部長は怒りで少女を殴る。

 殴られた少女は倒れるがそれでも一歩も退かなかった。


「八波さんを休ませて上げてください!!」


 少女達と支部長が言い合ってると一人の少女が入って来る。


「未確認が現れたわ!!」


 その言葉に少女達は互いに頷き行動する。


「八波さんは休んでて、私達が行くから」


「え?」


「今更で本当にごめんなさい、でももう覚悟決めたから」


「私達ずっと八波さんに甘えてた、だからそのツケを今払うよ」


「敵わなくても、最後まで戦うから」


「皆、行くよ」


 少女達は未確認の所に向かいに一斉に部屋から出て行く。


「おい!! 勝手な行動をするな!! 俺の命令に従え!!」


 支部長が騒ぐが誰も聞く耳を持たずにそのまま向かうのだった。


「ふざけやがって、あいつら道具の分際で」


「アンタ、うるさいわよ」


「何だと、ぐぼああああああああー!!」


 支部長が振り向くと玲子が渾身の右ストレートを支部長の顔面に当てるのだった。

 戦闘系のスキルホルダーでなくても普通の大人の男性よりは力も強く、吹っ飛ばせるほどの力を持っているのである。


「あー、スッキリした」


 殴られて気絶している支部長を無視して玲子は治療室を出て映像室へ行き未確認が現れた場所の映像を見る。

 するとスキルホルダーの少女達が到着し未確認との戦いが始まっていた。

 しかし、その光景は悲惨なものだった。

 少女達は未確認に挑むが八波と違い明らかに戦力が低くさらに今まで八波だけに戦わせてた事により戦闘経験がないため次々と未確認にやられていく。


「やはり、戦闘慣れしていないあの子達じゃこうなるか、だから八波ちゃんにちゃんと休みを与えるべきだったのよ、あの子達にもちゃんと戦闘経験を積んでもらう意味もあったのに」


 苦虫を噛み潰した顔をしながら玲子はモニターを見る。

 そこには戦闘慣れしていない少女達が次々に未確認の攻撃により命を落としていく。


「私が」


「それはダメ!!」


 八波が行こうとするが玲子が必死に止める。


「わかってるの? これ以上は本当に命の危険なの、絶対に行かせないわ」


「ですが、このままじゃ」


「わかっている、でもあなたが行くのはダメ」


「・・・・・・」


「わかって」


 玲子は必死な顔をするが八波は首を横に振る。


「それでも、私が行きます、これ以上犠牲を増やしたくないから」


「それは」


「行って来ますね」


 八波は武器を持って出て行く。

 玲子は止める事ができなかった。

 現状を考えれば今の基地で戦闘経験のない少女達では未確認を倒せない。

 八波にしか倒せない事を玲子はわかっていたから八波を止めたいのに止める事ができなかった。


「私も結局、他の人達と同じで八波ちゃんに頼るしかないのね」


 偽善な自分に対しての怒りからか玲子は思い切り壁を叩き叩いた手からは血が流れていた。


「くっ」


 未確認との戦いをしているが戦闘経験のない彼女達では全く歯が立たずにただ逃げ回るだけしかできなかった。

 周りにはすでに多くの少女達の亡骸が悲惨な姿で転がっていた。


「八波さん、ずっと一人でこんなバケモノと戦ってたのね」


「今でも逃げ出したい、たくさんの子が死んでしまった」


「こんな怖い中でずっと一人で逃げずに戦っていた八波さん凄いよ」


「これも八波さん一人に全て押し付けた報いだよね?」


「うん」


「そうだね」


 壁に隠れていたが未確認が隠れていた少女達を発見する。


「見つかった」


「ちゃんと八波さんに謝りたかったね」


「何もかも今更よ、とっくに手遅れ」


「そうね、だからせめてもの償いとして逃げずに戦うよ」


 少女達は武器を構えて未確認を攻撃するのだった。






 武器を手に取り八波が現場に辿り着くとそこには未確認の群れが暴れていた。

 そして足元にはすでに息絶えていた少女達がたくさん転がっていた。


「く、うう、うがああああアアアアアアアアアアアアー!!」


 八波は感情に任せてスキルを発動させ未確認の群れに突っ込むのだった。






「くそ!! あの女俺を殴りやがって!!」


 目が覚めた支部長は殴られた頬を抑えて歩いていた。


「絶対に許さねえ、これからさらにこき使ってやる、道具はいくらでもいるんだからな」


「残念だが、君をこれ以上好きにさせるわけにはいかない」


「は?」


 支部長室のドアを開けるとそこには見知らぬ男性が座っていた。


「誰だ、お前!?」


「私か? 私は竹本蓮司、総帥の命令でここに来た」


「総帥だと?」


 支部長は竹本に不審な目を向ける。


「この支部にいる少女達を全て引き取り私がその子達の新たな支部長とする、それが総帥からの命令だ、だから君には支部長を退任させてもらう」


「な!?」


 突然の事に支部長は目を見開く。


「ふ、ふざけるな!! 何故そんな事を!!」


「何故? おかしな事を言うものだ」


竹本は立ち上がり支部長に近づく。


「君が今まで未確認との戦いをたった一人に任せてしかもちゃんとした休みすら与えていなかったそうだな? そのせいで彼女の身体は命の危険まで追い込まれた」


「な、何の事だ」


「全て知っているぞ、総帥も全ての支部の情報を把握しているわけではない、だから私が代わりに調べさせてもらった、ここみたいな小さな支部を全てな、この支部にはレアスキルしかも戦闘系のレアスキル持ちがいたが何故か総帥には報告がなかったそうだが、どう言う事かな?」


「う、あ」


 答えに詰まり支部長は冷や汗をかいている。


「レアスキル持ちが現れたらすぐに報告する、総帥からそう指示が出ていたそうだが、ここには戦闘系スキルのレアスキルともう一人治療系のレアスキルを持った子がいたと聞くが何故総帥に報告しなかった?」


「そ、それは」


「ああ、答えてもらわなくて結構だ、大方実績でも上げてもっと上の支部長に成り上がろうと言う野心でも持っていたんだろう、だから執拗にその子に休む暇も与えず戦わせていたんだろう?」


「ぐっ」


 図星をつかれて支部長は答えに詰まる。


「まさか、自分の出世と言うくだらない事のために彼女達を犠牲にするとは、君は支部長に相応しくないようだな」


「な、何だと?」


「君は今日で支部長はクビだ、そして」


 竹本は手を前に出す。

 その手には銃が握られていた。


「君の命も、今日で終わりだ」


「なっ!?」


「君はレアスキル持ちが二人もいるのにその存在を報告しなかった、しかも一人は戦闘系のレアスキルで命の危険まで追い込んだ、それだけではない、彼女達を道具のようにぞんざいに扱った、君をクビにしてそのまま野放しにしておくといつか邪魔な存在になる可能性がある、だから私がここで消す」


「しょ、正気か!? こんな事して許されると思ってるのか!? 俺を消したら俺の親が黙ってないぞ!?」


「その辺は特に問題ない、君が親のコネで支部長になった事も知っているからね、それに君の親も既に総帥の命によって消されている、後は君だけだ」


「お、お前、人殺しにでもなるつもりか? そんな奴が支部長なんてして良いと・・・・・・」


 言い終わる前に竹本は引き金を引き銃弾は支部長の心臓部分を撃ち抜くのだった。

 支部長は倒れて血が流れ出ている。

 

「人殺しか、確かにその通りだ、私達は普通の少女だった彼女達をバケモノにし戦場に送り出して死なせているんだからな」


 支部長の遺体を見ながら誰かに語り掛けるように竹本は言うのだった。





読んでいただきありがとうございます。

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