EPISODE 2
「玲子さん!!」
支部長に叩かれて地面に転がった玲子に八波は駆け寄る。
「何があったんですか!?」
「大丈夫よ」
八波に支えられ玲子は立ち上がる。
「支部長、一体何があったのですか?」
「大した事じゃない、こいつが生意気にも私に意見をしたから少し躾けただけだ」
「躾け何てよく言うわね、あなたが間違っているから親切に教えただけでしょ? それなのに女の子を叩くなんて最低ね」
「何だと!!」
支部長が再び手を上げようとするが八波が止めに入る。
「やめてください、支部長」
「ちっ!!」
舌打ちをしながら不快な顔で理事長は去って行く。
「玲子さん何があったのですか?」
「そうね、あなたにも関係ある事だから話すけど、あなたの身体はもう限界まで来てるのよ」
「え?」
「バーサーカーは身体能力が人間の限界以上に上がるから戦うだけであなたの身体も壊していくのよ、だから身体が治るまで戦わせない方が良いと言ったのにあの親父そんなの関係なくあなたに戦わせようとしていたのよ、だから意見したのよ、でも結果は無駄骨だったわね」
「玲子さん」
「八波ちゃん、もう戦ってはダメよ、このままだと最悪死んでしまうわよ」
「でも、未確認が現れたら戦うしかないんです、早くこの戦いを終わらせるためにも」
「八波ちゃん」
「・・・・・・」
玲子が止めてもそれでも八波は戦う道を選ぶ、しかしその二人の会話を聞いていた子が一人いたが二人は気づかなかった。
その後も八波は未確認が出現する度に一人で行き倒す度に傷だらけになり帰還する日々を過ごしていたある日ついにその時は来てしまった。
「ない!! そんなバカな!!」
いつものように医療室に行くと慌てた玲子が目に入る。
「玲子さん、どうしたのですか?」
「スキルホルダーになるための薬品がなくなってるのよ」
「え? それって」
「そうよ、あの薬を適合者に打つ事でスキルホルダーになってスキルを一つ手に入れられる、その薬が一つなくなってるのよ」
「一体誰が?」
「もしものためにこの部屋に監視カメラを仕掛けて置いたから、もしかしたら何かわかるかも」
玲子は部屋に仕掛けた感じカメラを見る。
「え?」
するとそこに映っていたものに二人は驚く。
「香弥ちゃん?」
そこに映っていたのは医療室に入り注射を一つ盗んで行く香弥の姿が映っていた。
「どうして、香弥ちゃんが?」
「玲子さん!! 大変よ!!」
二人が疑問に思ていると勢いよくドアが開き一人の少女が慌てた様子で入って来る。
「どうしたの?」
「香弥さんが、香弥さんが血を吐いて倒れてるの!!」
「何ですって!?」
「え?」
少女に案内され八波と玲子は部屋に入ると倒れている香弥を見つけすぐに玲子が駆け寄る。
「これは、一体何があったの?」
「わからない、香弥さんに用があったから部屋に入ったら血を吐いて倒れていて」
「・・・・・・まさか」
玲子は辺りを見ると香弥の周りに注射器が落ちていた。
「まさか、香弥ちゃん新たなスキルを手に入れようとしていたの?」
「新たなスキルって、でもスキルって一人一つだけしか持てないはずでは」
「そうよ、でも香弥ちゃんはそれを使って新たなスキルを手に入れようとした、そして副作用が起きてしまった、すぐに治療室に運ぶわ」
治療室に運び込まれた香弥は玲子によっての治療が開始された。
長い時間が過ぎたような感覚に陥った八波はただ香弥の無事を祈る事しかできなかった。
やがてドアが開き玲子が出て来る。
「玲子さん、香弥は?」
「こんな小さな場所じゃ満足な治療ができないわ、もっと大きな場所で治療させないと」
「そんな」
玲子の言葉に八波は絶句する。
「どうして香弥はこんな事を」
「おそらくだけど、八波ちゃんのためだと思うわ」
「私の?」
「一緒の部屋にいるからこそ八波ちゃんが傷ついて帰って来るのがいたたまれなかったかもしれないわね」
「そう言えばいつも自分が戦えたらと言ってました」
「そう言う事か、彼女のスキルは戦闘系のスキルじゃなかったからもう一度薬で新たなスキルを手に入れようとしたのね、まあ今は香弥ちゃんを大きな施設で治療させないといけないわね、あなた支部長に頼んで来てくれるかしら?」
「わかったわ」
玲子は少女に頼み支部長へと頼みに行くが帰って来た彼女は浮かない顔をしていてその理由を聞いた玲子は怒りを露わにした。
「ふざけるな!!」
玲子はそのまま支部長室に向かいそのままドアを開け支部長に駆け寄る。
「どう言う事よ!! 香弥ちゃんを大きな施設に移動できないって!!」
「言葉通りの意味だ」
「あの子は今すぐ治療させないと大変なのよ!! このままじゃ死んでしまうのよ!!」
「だから何だ?」
「は?」
支部長の言葉に玲子は理解できない顔をする。
「彼女は多くいる雑用スキルの一人じゃないか、そんないくらでも替わりがいるのを大きな施設に送るなど無駄じゃないか」
「何を言ってるの? 人が死ぬかもしれないのよ?」
「スキルホルダーになったらもう人じゃないだろ? いくらでも替わりがいる兵器の道具にすぎない」
「ふざけるな!!」
玲子は机を思い切り叩く。
支部長のあまりにもな言葉に怒りだけが涌いて来ていた。
「あなた、それでも支部長なの!! あなたのために働いてくれているあの子達に何も感じないの!!」
「私は支部長だぞ、お前達のような道具を管理するんだから道具が私のために動くのは当然の事だ」
「この」
「だったら、私が今以上に頑張ります」
玲子が支部長に手を出そうとした瞬間八波が支部長に意見するために部屋に入って来る。
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