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第二話

「それでは、我らの心と体を支える糧となるよういただこう。父なる神の慈しみをいただくとしよう」

 そんな合図でお夕飯が始まる。大きなテーブルを囲むのはボクとさっきの人、それと顔を知らない新しい人が四人。知らない人だけど見覚えがある。

 にほんに住んでいたはずのボクは、今はナーストロイという国に住んでいる王子様らしい。最初とその次に目が覚めた部屋にあった日記にそんな事が書かれていた。ボクの知っているひらがなとは違う文字なのに、読めるし意味もわかる。それに、ここに住んでいる時の記憶もおぼろげながらある。ほいくえんのえんちょう先生が言っていたけれど、死んじゃった生き物は生まれ変わるらしい。人も、ねこさんも、虫さんも。全くの別人に生まれ変わって、前に生きていた事を思い出す人も少ないながらにいるのだとか。えんちょう先生の話が本当にあることなら、ボクは。

 フォークを握る手が動かないボクを不思議がって、同じテーブルを囲む男の人が話しかけてくる。

「お腹すいてないの? リュート」

 この人はボクの三番目のお兄様、ネイ兄様、多分。

「え、えっと……」

「先程まで昼寝をしていたからな、致し方あるまい」

「凄い騒ぎがあったのに、気付かず昼寝か。呑気で羨ましいぜ」

 テレビに出てくるお侍さんみたいな話し方をするのは一番目のお兄様、バーロン兄様。もう片方は二番目のお兄様、オフィクレイド兄様。にほんにいたボクにきょうだいはいなかったのに、ナーストロイのボクには三人もお兄ちゃんがいる。同じほいくえんの友達にきょうだいがいることを自慢される度に羨ましいと思っていたけど、こうして急にきょうだいができてみると、何をどう話していいのかよくわからない。こんなことなら友達に普段お兄ちゃん達と何をしているのかもっと聞いておけばよかった。

「オフィクレイド、そんな言い方はよせ」

「そうですよ。リュートはお昼寝の最中とっても怖い夢を見たのですから」

 同じテーブルを囲む、ボクを除いた五人のうち三人はボクのお兄ちゃん。残りの二人が誰か、わからないボクじゃない。お父さんと、お母さん。王子様であるボクのお父さんとお母さんってことは王様と王妃様になる。

「内容までは聞こえなかったが、中庭の方まで騒ぎが聞こえてたぞ。一体どんな騒ぎを起こしたんだよ」

「ご、ごめんなさい。すっごく怖い夢を見ちゃって」

「怖いお話でも読んだの?」

「どう……なのかな。あんまり覚えてなくって」

「それで、どんな夢だった。話してみろ」

「えっと……えっと……」

「バーロン。研究熱心なのはいいがそこまでにしなさい。悪い夢は夢だったと忘れるのが一番いいのだから」

「そうそう、父様の言う通り。嫌な事は無理に思い出す必要ないもんね」

 この大きなお城に住むボクの日記によれば一番上のバーロン兄様はお医者様の勉強をしていて、二番目のオフィクレイド兄様は戦うのが得意。三番目のネイ兄様は楽器が得意なんだって。バーロン兄様とオフィクレイド兄様はあまり接点がないけれど、ネイ兄様は一番歳が近いこともあって一緒に遊ぶ事も多いみたい。ほとんどはじめましての人といきなり家族になってどうしていいかわからないけど、できることなら仲良くなりたいな。

「多分もう大丈夫です、心配しないでください」

「何かあれば直ぐに言いなさい。お前の父はここにいるのだから」

「ありがとうございます、父様」

 お父さんとは違うけど、優しい父様もいる。写真でしか見たことのないお母さんにそっくりな母様もいる。ナーストロイという国に生まれ変わったボク、父様も母様も兄様たちもいるから怖くない、とは言いきれない。だってここはにほんじゃない、お父さんもいない。お父さんがここにいてくれたら、きっと怖くないのに。

 お夕飯のお肉を一口。美味しいけど、お父さんの作るご飯程じゃない。お父さんが作ってくれたハンバーグの方が美味しい。お父さんのご飯が食べたいな。せっかくのごちそうなのに半分くらい残しちゃった。ごめんなさい、そう謝ったボクに父様はただ優しく微笑みかけてくれただけだった。


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