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『シャーマンとヴィーナス』(フレーブニコフ)の場合

それは某国の大統領が、クレ○リンの執務室で、一人、気難しげに書類に目を通していた時のことである。


突然ドアが開き、全裸の乙女が厳しい顔つきで入ってきた。


あまりのことに大統領は椅子から飛び上がって驚いた。


「ど、、、どちらさまですか?」


唐突なことに肝を潰していたことと、相手があまりに美しい女性だったこともあり、知らず知らず、大統領のロシア語も丁寧に(Вы使用に)なっていた。


「私はヴィーナス!」

気高い女神は自分の腰に手を当て、強い語気で言った。


「ええ?」

思わず頓狂な声を上げる大統領。


だがヴィーナスはいっこうに構わず、

「モンゴルよ!」

とふくれ面をして呼びかけた。

「この部屋の一隅を

私に貸し与えなさい。

わたしは女神なのですよ」


「・・・え?

モンゴルって私のこと?」


「お前のせいでどれだけ長い間、

大地は苦しんできたことか!

女も若者も泣いている。

これではまるで獣の王ではないか」


「あの、私は生粋の

ロシア人ですが・・・」


「モンゴルよ!」

ぴしゃりと、美女は叫んだ。


「は、はい」

思わず大統領は返事をしてしまう。


「モンゴル!ああ、モンゴル!

お前のためにわたしはどれだけ

長いこと苦しんできたことか。

それに多少の罪の意識があるならば、

さあ、わたしを、あたためなさい!」


「えええええ!」

大統領はアタフタと顔を真っ赤にした。

「そ、、、それはマズい!それはいけない!」


「わたしは、女神なのですよ!

ここで二日、三日を過ごしましょう!」


「いや、二分、三分でもムリです!ムリ!」


「乙女の情熱は窮屈ですか?」


「いえいえ、そのようなことは決して!」


「ならばモンゴルよ!わたしを救いなさい!

わたしは全身が炎のよう!

官能のタンバリンを打ちながら、

わたしは生きているのです!」


「困ったなあ、、、」


「ああ、誰もわたしを

彫刻に描いてはくれないの?

だれもやさしい恋文を描いてくれないの?

いまの若者たちは冷淡です。

若者たちばかりでなく、

軍の司令官たちも、、、。

モンゴルよ!答えなさい!

あのハナシは本当なの?」


「、、、ど、どのハナシでしょう?」


「アジアの帝国は

結婚の喜びに対しても

冷酷無比であると!」


「だから私はモンゴルじゃなくて

ロシア人・・・」


「モンゴルよ!

わたしはこの耳で聞いたのです!

冷酷無比なる現代の『カーン』が

この城からエウローペの地を襲っていると」


「・・・それは、そのう、、、」


「やはり、お前なのだな!モンゴルよ!」


「こ、困ったなあ、、、」


「お前のためにわたしはどれだけ

長いこと苦しんできたことか。

それに多少の罪の意識があるならば、

さあ、わたしを、あたためなさい!

イヤだというなら力づくで

連れていくまでのこと!」


「え?」


大統領はあわてて逃げ出そうとしたが、

轟音とともにクレ○リンに雷が落ち、


その衝撃の中、全裸の乙女に、

襟首を掴まれて空へ登っていく

大統領の姿と悲鳴を、

人々は目にしたそうな。


「だれか助けてくれーーっ!」

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