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泣き虫魔法少年アーサーと白猫ノーラの奇妙で憂鬱な冒険  作者: ヨシオカセイジュ


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魔女の村 part2

「大変だ!魔女狩りだ!

 魔女狩りが行われるぞ!」


 男の報告を聞いた村人たちは、

 その夜、緊急の集会を開いた。

 子供を除く老若男女、殆どの者が

 集会場に集まってきている。


「そんな馬鹿な!何で今ごろ。

 街や周りの村の連中とも

 上手くやれていたじゃないか!」


「魔女狩りなんてもう二百年以上、

 行われていなかったのに、なぜ」


「教会の者や役人たちも、私たちの

 魔法や薬で助かった者も大勢いるのに」


 口々に不安を口にする村人たちに

 街へ出かけていた男が事情を説明する。


「それが、顔見知りの商人の話によると、

 新しく赴任してきた司祭ってのが

 失敗を犯してこの地方に飛ばされた

 やつらしく、この森に住む俺たち魔女の

 末裔の話を聞きつけて、点数を稼いで

 中央へ復職を狙ってるんじゃないかって」


「そんな……そんな馬鹿な話があるのか⁉︎」


「自分は今までの司祭のように甘くはない、

 森に住む魔女たちを一人残らず狩り出すと

 宣言しているらしいんだ」


 ざわざわと村人たちの間に動揺が広がる。


「そんな、一体どうすればいいんだ、

 長老はどう思われますか?」


 村の長老たちの中でも有数の魔法使いで

 百五十歳を超える最年長のフックスが

 重い口を開いた。


「わしは、魔女狩りを生き延びた

 最後の世代を知る一人だ。

 あの頃、捕まったほとんどの者が

 切り刻まれ、焼かれて殺された。

 運よく生き延びた者も、心や身体に

 取り返しのつかない深い傷を負った。

 もしそれが本当なら、何としても

 避けなければならん」


「ニナ、おまえはどう思う?」

 エミールの問いかけに、

 村人たちがニナに一斉に注目する。


 ニナがみんなの中央に歩み出て来た。

 その肩には傷が癒え、大きくなった

 鴉がニナを守るようにとまっている。


「この子が眼となってこの周辺の村を

 回って情報を集めてきてくれたわ。

 噂は本当よ」


 村人の間から、悲鳴に近い声が漏れる。


「すでにいくつもの村に異端審問官が

 派遣した魔女狩り隊が来て、少しでも

 怪しいと思われる者を連行している。

 ここにも数日中に訪れるでしょう」


「そんな、それじゃあどうすれば」

「この村も遅かれ早かれ見つかってしまう!」


 誰かが叫んだ。

「今のうちに皆でこの村を捨てて、

 逃げるしかないだろう」


「逃げるって、一体どこへ?

 小さい子供や妊婦、老人もいる。

 それにもうすぐ秋だ。あっという間に

 冬がくるのにどこへ逃げればいいんだ!」


 大きなお腹をしたグレタが泣き叫ぶ、

「この村を捨てるのはいやよ!

 生まれ育った、私たちの村なのに。

 この子の故郷なのに!」


 泣き崩れるグレタをニナが抱きしめる。


「闘うしかないじゃないか」


 中年の男が怒りのこもった声で言った。

「魔力が使えるものは魔力で、

 それ以外の者はありったけの武器を

 用意し、女・子供を守って闘おう!」


 別の誰かが叫ぶ。

「そんな、もう魔法を使えるものなんて

 ニナ様や長老たちをはじめ数える程よ?

 運よく追い払えたとしても、

 向こうが大規模で来たらお終いよ⁉︎」


「だからと言って、ここでみすみす

 皆殺しにされる気か!」


 集会場が真っ二つに別れ怒号が飛び交う

 騒ぎの中、ニナが手を挙げた。


「私に考えがある。

 誰か、馬を、一番足の速い馬を

 貸してちょうだい」


「一体何をする気じゃ、ニナ」

 ヨゼフが呼び止める。


「この村全部を結界で覆い、

 連中から見えなくするのよ」


 村人たちがどよめいた。


 長老たちの中でも一番魔法に詳しい

 隻眼のヴェルナーが、ニナを呼び止める。


いにしえの魔法・目隠し法か……。

 しかし、あれはごくごく限られた場所に

 使う魔法じゃ。

 幾ら何でも村まるごとなど不可能じゃ。

 第一、そんなことをすればおまえ自身に

 とてつもない負担がかかるぞ」


「だいじょうぶ、私にまかせて。

 今からかかれば、夜明け前までには

 間に合わせることができるはず」


「しかし、ニナ……」


 心配する声を押し切り、ニナは叫んだ。

「誰か、馬を!早く!」


 村一番の速脚を持つ、黒毛の馬が用意された。

「ニナ、お願いだからくれぐれも

 無理をしないでくれよ」

 エミールが馬の手綱を引いて心配そうに言う。


「ありがとう、エミール。

 一つだけ、お願いしていい?」


「なんだ、何でも言ってくれ」


「ミヒャエルのことをお願い。

 あの子の側にいてやって欲しいの」


「ああ、わかった。だから、

 必ず無事で帰ってきてくれ」


「……ええ、大丈夫よ」


 ニナは用意された馬にまたがると、

 月明かりだけをたよりに

 真っ暗な夜の森へと駆け出した。


 鴉がニナを見護るように

 馬と並行して翔び、

 ニナと共に森の中へと消えて行った。

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