第十一話「対機甲小隊戦」(3)
その夜も、二人は同じベッドで眠った。
ベッドがせまいのは相変わらずであったが、ユーキとナチアにとって、たいした問題ではなかった。
あとから聞いた話によると、シンとボーイは、黒猫亭の主人からの連絡を受けて、駆けつけてきたということであった。通信機器が制限される中、どうやって、とも思ったが詳細は聞かなかった。きっと、ボーイならではの連絡手段があるのだろう。
そうして到着した二人は、当然の流れで第十三小隊との戦闘を開始した。
前回とは異なり、二人はビーム・ソードとサンダー・ナックルで武装していたが、第十三小隊も、それは同様である。非常に厳しい攻防であったが、ほどなくして体力を回復したユーキとナチアが戦いに復帰して、勝敗は決した。
最後には、待機していた憲兵隊が介入してきたが、歓声を送る群集に守られるようにして、四人は無事、Bブロックから逃げ出すことに成功した。
「おやすみなさい。二人とも、ありがとう」
「ああ」
「じゃあ、な。今度やる時は、逃げ道くらい用意しておくんだぜ」
「礼は言いませんわよ。…借りは返しますわ」
異なる言葉で挨拶を交わし。四人は二つの部屋に分かれた。
自分達の部屋に戻ったユーキとナチアは、二人一緒にシャワーを浴びた。当初の目的からは外れたが、一種独特な満足感を共有していたのも、確かであった。
それぞれが、それぞれの想いを胸に仕舞い込み、疲れだけを流し落とす。
…あなたが無事で、ほんとうによかった。
…あなたは無茶を、しすぎですわね。
穏やかな時間の中、他愛のない会話をしながら、二人は眠りについた。
翌朝、シンやボーイに会わないように、早めに部屋を出る二人であった。
どんな顔をして男達に会えばいいのか。ユーキには分からなかった。
しかし、そんな心配も、結局は無用のものとなる。
早朝のミーティング・ルームでは、重要なイベントが待ち構えていたのである。
「クリスティン・ローゼスです。よろしくお願いします」
ユーキとナチア。それに遅れて来たシンとボーイに対して。少年は、両の手の平をあわせて挨拶をした。
年齢は十代前半。髪は明るいブラウン。理性的な顔立ちに、ブルーの瞳。軍服のサイズは合っているが、軍服自体が、あまり似合っていなかった。
そんな少年の隣には、ヘレンが立っていた。いつもどおりの口調で、簡潔な説明をする。
「彼が、チーム・マーベリックの六人目です」
少年は、にこやかに微笑んでいた。
第二章 終
<次回予告>
暗黒の宇宙。冷たい宇宙。音の無い宇宙。
宇宙は、何もかも飲み込んでしまう。
食らい尽くしてしまう。
人の命も。何もかも。
次回マーベリック
第三章 番外話「不可空域の英雄」
「シュレート回廊、全域に警戒態勢発令っ」