表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
おっさん底辺治癒士と愛娘の辺境ライフ 〜中年男が回復スキルに覚醒して、英雄へ成り上がる〜  作者: 飯田栄静@市村鉄之助
一章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

9/620

8「突然の依頼」②




 マリエラの頼みごとは予想通りだった。

 辺境の町では冒険者を雇うのは一苦労だ。

 そもそも冒険者ギルドの支部がないので、依頼ができない。

 ギルドがある町に足を運び、そこで依頼をして、引き受けてくれる冒険者が現れて、町にやってきてくれるまで、どのくらいの時間がかかるかわかったものではない。


 その間に被害がどれだけ大きくなるのか想像するに容易い。

 そんな理由もあって、冒険者が田舎の町村で突発的に依頼を受けることは多い。

 ギルドとしてはあまりいい顔をしないが、しかたがないと黙認している。

 冒険者にとっても、よほど法外な依頼料をとったり、問題を起こさなかったりすれば、ギルドに紹介料を持っていかれずにすむ美味しい仕事だったりする。


「報酬はもちろんしっかり払わせてもらうから、どうかな?」


(ソロになった瞬間、依頼とはどうすればいいんだ!? 魔狼と戦ったことはあるけど、俺が本当に戦えるのか!?)


「あの、ですね、お恥ずかしい話ですが、俺は冒険者ランクがFランク。つまり最底辺なんです」

「え? ……そうなの? でも、戦闘経験はあるんでしょ?」

「一応はあります。今まで、冒険者パーティーに所属していたので。ただ、雑用と回復がメインだったので、どこまで戦えるのか不安があります」

「回復魔法が使えるの!?」

「え、ええ、使えますけど?」

「待って待って、確かに魔狼退治を手伝って欲しいよ。でも、その前に、魔狼にやられたけが人が結構いるんだ。金は言い値で払うから、どうか治療してくれないかな!?」


 手を握られて、瞳を輝かされてしまいレダは困惑する。

 回復魔法も戦闘経験同様に不安が残るのだ。

 しかし、


「レダはわたしの足もなおしてくれたよ?」


 ミナがレダのことを恩人でも見るような目で見てくるため、できません、とは口が裂けても言えそうもなかった。


(不安はある。だけど、怪我している人を少しでも治せるなら……断る理由はない!)


 ポーションは高額だ。

 辺境の町にどれだけのストックがあるのかもわからない。

 ならば、自分の力を貸してあげたかった。


「私たちも重傷者を治してほしいなんて無茶は言わないよ。そんなことできるのは神官様くらいだからね。だけど、ポーションも底を尽きてしまったから、せめて軽傷だけでも、お願い!」

「わかりました。じゃあ、さっそくとりかかりましょう。案内してください」

「いいの!?」

「もちろんです。それに、回復魔法は時間が経過すると効果が低くなってくるんですよね。治すなら早い方がいいんです」

「わ、わかったよ。案内するから、こっちだよ」

「あのっ、ミナをどこかに預けることは?」


 怪我人がどの程度かわからないため、幼い少女を連れて行くのに躊躇いがあった。

 レダの声に、マリエラは「しまった」とばかりに顔をしかめる。


「ご、ごめんごめん、ちょっと急ぎすぎたね。お嬢ちゃんは母さんに預けて、それから」

「ミナもいく」

「ミナ!?」

「へいき。レダと一緒だから」

「……だけどさ」


 不思議と信頼してくれているのは嬉しいのだが、どうしていいのか判断できない。

 そんなレダにマリエラが提案した。


「私がそばで見ているから、一緒に連れて行ったらどうかな? 女の子がここまで言っているんだから、ね?」

「……わかりました。ミナのことお願いします」

「任せて!」

「このお姉さんの言うことをしっかり聞くんだよ、ミナ?」

「だいじょうぶ。ミナ、レダとおねえさんの言うことちゃんときくよ」


 なら、よし。と頷き、レダはマリエラに案内されて、町の中心部にある集会場に案内された。

 近づくと、まだ集会場の中に入っていないにも拘わらず濃い血の匂いがした。

 思わず顔をしかめてしまう。


「怪我人は十五人だよ。とくに五人が酷いんだけど……そっちはもう。とにかく、治せるだけでいいからお願い!」

「わかりました。それじゃあ、入ります」


 扉を勢いよく開ける。

 次の瞬間、むせ返りそうな血の匂いと、青年たちのうめき声が聞こえた。


「……うぅ」


 明かりに照らされる赤に塗れた集会場の光景に、ミナが怯えた声を出してレダの影に隠れた。


「これは酷いな。鉤爪でやられたみたいだな」

「そうなんだよ。牙でやられた子も数人いたけど、助からなかった。なんとかなるかな?」

「やれるだけやってみます。ミナをお願いします」

「よろしく頼むね」


 ミナに大人しくしているようにと、目を合わせて頷く。

 レダの意思が伝わったようで、彼女も頷いてくれた。


 集会場の中は、四方をランタンで明るくしているため、足元まではっきり見える。

 床には毛布を引き、青年たちが並べられるように横になっていた。

 誰もが血で濡らした包帯を巻いている。

 中には、包帯では覆いきれないほど数多の傷を身体中に作って呻いている者までいた。


(酷い光景だ)


 レダは、一番近くで呻いている青年のすぐそばに膝を着けると、包帯が厳重に巻かれている背中にそっと手をかざす。


「……う、うう……たすけ、て」


 魔力を体内からかき集めて一番の回復を、と念じた。



「――回復」



 刹那、怪我人が淡い光に包まれた。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] >金は言い値で払うから、どうか治療してくれないかな!? 治療費を女将が決められるのかね? >ポーションは高額だ。 その知識があるなら、ポーション代わりに高額請求できるってわか…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ