25「ドラゴンの査定」④
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ギルドの裏手にエーリヒの商会の馬車が止まっていた。
ギルドに物資を運んでいるようだが、なぜか馬車はボロボロだ。
窓が割れ、矢が刺さり、刀剣類で斬りつけられた痕もある。
「馬車がすごいことになってますね。なにかありましたか?」
「実は、道中野盗に襲われてしまいましたね。モンスターだけでも頭が痛いのに、野盗まで……今回は荷物の一部を奪われただけですみましたが、いやはや、物騒になってきましたな」
「ギルド側としても野盗が増えたことは困っています。討伐依頼を定期的に出しているのですが、野盗も馬鹿ではないらしく、冒険者の前になかなか顔を出さないようです。おそらく、手馴れていますね」
「ミレットさん」
「すみません、遅くなってしまって。ギルド長との話が長引いてしまいました」
回復ギルドの人間がアムルスの町に現れレダを嗅ぎ回っていることを報告に行ったミレットが戻ってきた。
レダたちはドラゴンを査定できずオークションにかけることを彼女に伝える。
「なるほど。査定ができないのならオークションはいい考えだと思いますよ。数ヶ月前に、ワイバーンが出品されたときもかなりの高額がついたはずです。貴族というのはどうも竜種を集めることを一種のステータスにしているようですね」
「商人としても顔を合わせるたびに竜種はいつ手に入るとせっつかれておりますよ」
竜種とはドラゴンからワイバーンまでを指す意味だ。
中にはドラゴンではないものも混じることがあるが、見た目が竜っぽいと竜種とされることもあるらしい。
「ミレットさん、野盗の話に戻りますけど、そんなに酷いんですか?」
「ええ。人攫いまでしているようで、アムルスの住民は未遂程度で逃れていますが、商人や冒険者の方が一部攫われることもありました」
「……たちの悪い」
「定かではないのですが、元冒険者が率いている野盗らしいです」
「同じ冒険者として恥ずかしい限りですよ」
「いいえ、レダさん。気にやむことはありません。あくまでも個人の選択なのですから。冒険者もそうですが、商人が野盗と組むこともある場合があります。冒険者も商人も全員が全員成功するわけではなく、楽な道への誘惑に抗えない者も少なからずいるものなのですよ」
エーリヒの言いたいことはわかる。
レダだって、アムルスで治癒士としてみんなに頼りにされるまで、うだつの上がらない底辺冒険者だった。
さすがに野盗になりたいと思ったことは一度もないが、自分で選択した冒険者への道を誤っていたのではないかと考えたのは一度や二度ではない。
「いっそ、回復ギルドの職員を野盗が襲ってくれればよかったのに」
「……ちょ、ミレットさん!」
「冗談です。冗談ですってば。うふふふふふふふ」
(じょ、冗談には聞こえなかったんですけど)
ちらり、とエーリヒを伺うと、彼も引きつった笑みを浮かべていた。
「冗談はさておき、レダさん。冒険者ギルドとしては、回復ギルドの職員は無視しちゃって構いませんから。アポなしで来たんですから、それなりの態度をとってやりましょう。どうせ文句しか言ってこないでしょうし」
「いいんですか、それで?」
「いいに決まっています! レダさんは立派な冒険者ギルドの一員です。回復ギルドなんかに好きにさせたりしませんよ!」
憤るミレット。
彼女はレダを冒険者ギルドの一員と言ってくれた。
それだけで十分だった。
「あ、今度野盗対策の会議がありますから、よかったらレダさんも出席してください。きっと治癒士のレダさんに頼ることもあると思いますから」
「わかりました。日時が決まったら教えてくださいね」
(――野盗か。そういえばジールが野盗落ちしたってアイーシャから聞いていたけど……さすがにこんな辺境にいるわけがないか)
かつてのパーティーリーダーが落ちぶれてしまったことは聞いているが、活動拠点だった王都から遠く離れたアムルスにまできていないだろうと思う。
彼に思うことはある。
なぜ野盗になったのか、自分をクビにした以降になにがあったのか、と。
ただレダだって他人事ではない。
一度は全てを失って自棄になりかけていた。
そんなレダが道を踏み外すことがなかったのは、ミナとの出会いのおかげである。
彼女と出会い、一緒にここまできた。ルナが増え、生活が賑やかになった。
守る家族のできたレダが道を誤ることはないだろう。
(ジール。お前には守りたい人がいなかったのか? 道を踏み外さないよう踏ん張れる理由はなかったのか?)
いつか彼と再会することがあれば聞いてみたいとレダは思った。




