89「エンジーの気持ち」①
エンジーは、用意してもらった自室に戻りベッドの上で悶絶していた。
「ぼ、僕はどうして……っ!」
足をばたばたさせて、枕の顔を埋めている。
そんなエンジーをラウレンツが冷ややかな目で見ていた。
「……エンジー、お前は学生じゃないんだから」
「だってだって! ミナ先輩と手を繋いであんな気持ちいいことに……」
「気持ちいい? エンジー……お前、どういうことだ?」
「う、うん。魔力の循環がとっても気持ちよくて、まるでミナ先輩とひとつに溶け合っているって言うか、刺激が強くて……」
「ああ、だから鼻血を出して倒れたのか」
「え!? 僕、鼻血出して倒れたの!?」
「恍惚とした顔もしていたぞ」
「それじゃあただの変態じゃない!」
「……私は変態だと思っていた」
「酷いよ!」
付き合いの長い親友であるラウレンツを相手にすると、エンジーの態度もいつもより気安い。
ふたりの培った時間の長さゆえだ。
「ミナ先輩とみんなの前でそんな失態をしたなんて……僕、明日からどんな顔をすればいいの?」
「いつも通りで構わないだろう。何を今更」
「だから酷いよぉ」
「レダ先生も、ミナさんたちも気にしないさ。そういう方々だ」
「そうだね」
よろよろとベッドから起き上がったエンジーに、一緒に飲もうとしていたワインを飲む支度をラウレンツが始めた。
グラスにワインを注ぎ、エンジーに手渡す。
「エンジーが結界術を覚えたことに乾杯」
「ありがとう、乾杯」
グラスを掲げてワインを飲む。
芳醇な香りと味が心地良い。
「ところで、エンジー。ひとつ聞きたいことがあるんだが」
「どうしたの?」
「その、なんだ。お前は、ミナさんに恋しているのか?」
ラウレンツの質問に、エンジーは思い切り咽せた。




