84「魔力回復と食事」
夕食はご馳走だった。何よりも、量があった。
教会で寝食をさせてもらっている間、いつも食事をはじめとした様々なものに気を遣ってもらっていたが、今日はより一層すごかった。
「我々協会からの感謝の気持ちです」
と、ウィルソンが微笑んでくれたので、レダたちは遠慮なくいただいた。
特に、レダとエンジーは食べた。とにかく食べた。
魔力が枯渇するほど慣れない結界術を多用したことで、わかりやすく空腹なのだ。
魔力を回復させるには、よく食べ、よく眠るしかない。
レダたちに続き、食事量がいつもよりも増えているのはミナだった。
魔力を消費したので空腹を覚えているようだが、枯渇しているわけではないので大食いする必要はないようだ。
ミナの魔力が枯渇していないのは、魔力量がもともと多いのもそうだが、レダたちに比べて結界術を効率よく使えていたからというのもあるだろう。
(――ミナの成長がここしばらく凄まじいね。潜在能力が高いというのももちろんなんだけど、やっぱり魔術を学び習得することが楽しくて仕方がないんだろうな)
レダもミナくらいの年齢の頃、母に教わった魔法を飽きもせず使い続けていたことがある。
知らないことを知るということは楽しい。
心を満たし、栄養となる。
それを身をもって経験しているからこそ、ミナが少し無理をしないか心配でもあるが、よほど無理をしないのであれば止めるつもりもない。
過保護すぎるのもよくないのだ。
「……パパ、たくさん食べているけど大丈夫ぅ?」
「あ、うん。平気だよ。魔術師は魔力使うから、食べないとね」
「ふぅん。そういえば、パパって体型はほっそりしているわよね」
「そうなんだよ。あまり鍛えても筋肉がつかないのもあるんだけど、魔力を使えば使うほど回復に栄養が必要だから太れないというか」
「なぁにそれぇ、羨ましいんですけどぉ!」
「ははは。必ず魔術師が痩せているなんてことはないんだけどね」
もちろん、例外もいる。
魔力量が少なくとも、魔術を使わなければ魔力回復に栄養をもっていかれることはない。
その場合、太ることもある。
レダの場合は、昔から肉付きが悪いというのもあるし、鍛えても筋肉がつかない。何よりも、最近は運動をサボりがちだ。だが、魔力消費は日課として行なっているし、アムルスにいれば治療で魔力を使う。
現状の暮らしをしていれば、体力的に衰えることはあっても、不健康に太るということはない。
レダとしても、良き父、良き夫でいたいので必要以上に食べて腹が出る、なんてことは避けたい。
「ところで、ルナ。あまり食べていないようだけど、調子でも悪いの?」
「ううん。別にどこかが悪いというわけじゃないんだけど、やっぱり教会での生活って気を使うのよねぇ。王都も空気が合わないっていうか、アムルスでのんびりしている方があっているみたい」
「それは同感だよ」
レダとルナは苦笑した。
「でも、食べなさすぎはよくないよ?」
「うーん、食欲がないというか、パパたちほど身体を使っていないからかしら。果物とか甘いパンやクッキーは食べられるんだけど、お肉とかは別にいいかなぁって」
「調子が悪くなったらすぐに言ってよ?」
「わかっているわよぉ。それよりも……」
「うん?」
ルナがにんまりした顔をして、レダに負けず食事を平らげたエンジーに視線を向けた。
一度は倒れたエンジーだが、今は体調が戻ったようだ。
しかし、やはり魔力枯渇のせいでレダ同様に食事で魔力を回復しようと、結構な量を食べている。
そんなエンジーは、食事を終えると、ミナのことをちらちら見ては顔を赤くしていた。
「どうするのぉ、あれ?」
「……本当にどうしようかなぁ、あれ?」




