83「結果と推測」②
「お疲れ様でした、レダくん」
「――ウィルソンさん」
「あ、ウィルソンおじさん。もうキレッキレのダンスはいいの?」
「ははは、年甲斐もなくついテンションを高くしてしまいました。もっとも、それだけすごいことが起きたのですから、たまにはいいでしょう」
ウィルソンが手を振り笑顔でレダを労った。
ルナが茶化すが、レダもウィルソンが踊り出した時には驚いたものだ。
「今、食事の準備をさせていますのでお待ちください。魔力を過度に使ったので、体力面もそうですが、お腹も空いているでしょう?」
「はい、実は、とても」
「自然なことです。しかし、先ほどルナちゃんと少し話しましたが、レダくん、ミナちゃん、エンジーの名は歴史に残るでしょう。私は確信しています」
「――え? 冗談とかじゃないんですか?」
「ええ、もちろんです」
「ほらぁ、言ったじゃなぃ!」
歴史に名を残すと言われ、驚くしかない。
ウィルソンは苦笑する。
「そもそも災厄の獣を倒しているので、自然と名は残るでしょう。公にするかどうかは、王家次第でしょうが、間違いなく歴史上の記録に、それこそ他の国でも災厄の獣を認知している国での記録に残ることになるでしょうね」
「…………あー、やっぱりそう言う感じなんですね」
「はい。そう言う感じです。ですが、それとは別に、今日の出来事は歴史に残るでしょう。少なくとも教会の歴史には、私が刻みます」
「やったね、パパ!」
「あははは、ありがとう?」
一年前は王都で底辺冒険者だったレダが、教会の歴史に名を刻まれると言われても困惑しかない。
だが、心境の変化か、少し嬉しくもある。
娘と家族に「頑張ったんだよ?」と誇れるものだ。
もっとも、今日、結界術を覚えた件はレダではなくミナの快挙であるが。
「今回、多くの人間が、それも教会関係者が結界術を習得しました。歴代にない事態ですので、私は死ぬまで、いいえ、死んだあとも多くの結界術師を輩出した教皇としてドヤ顔できるでしょう。ミナちゃんたちのおかげですけどね」
そう言って、お茶目にウインクするウィルソンに、これは笑っていいものなのかとレダが悩む。
「あ、やっぱりそう言うレベルなのぉ?」
「はい。ミナちゃんのおかげで驚くほど簡単に結界術を覚えてもらいましたが、本来はこうもいきません。結界術に適性がない人間まで習得してしまったのですから、今後の結界術への適正はじめ様々な魔術での適正に関しても、検査手段を改める必要がありそうですね」
「……あらぁ、そこまでなんだぁ?」
「そこまでなんです。ただ、もうこのような奇跡は起きないでしょうけどね」
「それってどういうことぉ?」
「今回、ミナちゃんは他人の魔力を使用して結界術を使ってくれました。これは、普通できないんですよ。いえ、絶対にできないわけではないんですが、「普通は無理」とざっくりですが学んだ我々には真似できません。先入観がなかったミナちゃんだったからこそ、できた奇跡です」
「――あ、やっぱりそうですよね!? 俺も、昔、他人の魔力を使うことなど普通はできないって教わったことがあるから、ちょっと疑問だったんですけど、ミナが普通に使っているし、ウィルソンさんも特に気にしていなかったから自分の勘違いかと思っていましたよ!」
「私は、歴代教皇の中でも演技派なので。それに、レダくんも自身の先入観が曖昧になったことで、ミナちゃんと同じように他人の魔力で結界術を使えましたよね?」
「はい」
「人間、自分で無理だと思い込んでしまうと、実際にできることでもできないものです。今回、ミナちゃんの純粋さと知識不足を利用させていただきました」




