82「結果と推測」①
「……今日、言うのは二回目だけど、疲れた。本当に疲れた」
レダは、広場のベンチに力なく座っていた。
「お疲れ様、パパぁ。はい、つめたいお水」
「ありがとう、ルナ。人を介して魔術を行使することがこんなにも大変なことだったとは思わなかったよ」
ルナから受け取った水は氷とレモンが入っており、清涼感があって飲みやすかった。
疲れた身体にはレモンの酸味が染み渡る。
「それにしてもぉ、まさかディアンヌ様と他の人たちがあんなにあっさり結界術を覚えちゃうなんてびっくりよぉ」
「俺もびっくりだよ。ディアンヌさんは結界術の適性がないはずだったんだけど、使い方を知る知らないでこんなにも変わるんだね」
「本当よねぇ」
聖女ディアンヌは、結界術を使うことができない。
教皇ウィルソンはそう断言し、ディアンヌ自身も結界術を使えないことを受け入れていた。
しかし、ミナがディアンヌを介して結界術を使ったことにより、彼女は見事に結界術の使い方を覚えてしまったのだ。
とはいえ、結界術を使えるようになったディアンヌだが、結界術への適性がないと言われていたせいか、「使えるが苦手」というところで治った。
使えるのは使えるのだが、街を守る結界や自らの身を守る術として使うには自信がない。
それがディアンヌの結論だった。
それでも、適性がないと言われていたディアンヌが結界術を覚えて使えるようになったのはとてつもない出来事だった。
教皇ウィルソンが年甲斐もなく小躍りするほど、と言えばわかりやすいだろう。
「まさかウィルソンおじさんがあんなキレッキレなダンスをするとは思わなかったわぁ」
「ははは、俺もだよ。本人が忘れてくださいって言っていたから忘れてあげようね」
「はーい」
他ならぬディアンヌ自身が「あ、これ、聖女やめられなくなりませんか?」と不安がっていたが、その辺りはレダにはよくわからない。
ウィルソンが小躍りするには、他にも理由があった。
結界術の適性がありながら、結界術を使えない修行中の者たちが、適性がないと言われていた者が数名、結界術を見事に習得してしまったのだ。
前者はまだ慣れていないが、回数をこなすことでそれなりに使えるようになった。後者は、もともと適性がないこともあり、ディアンヌ同様に「苦手だが使える」というくらいでおさまった。
ミナだけではなく、レダとエンジーも相手を介して結界術を使うことができた。
そのおかげで、結界術を習得できたものが多くいたのだ。
適性がない上に、聖属性でない者は結界術を使用できなかった。
適性がある者であれば、属性関係なく習得ができた。
聖属性であれば、適性がなくとも結界術を使うことができた。
これらに関しては、何が正解なのかわからない。
個人差もあるので、一概に言えない。
ウィルソンが調べていくらしいので、任せるだけだ。力にはいつでもなる。
だが、レダはあくまでも治癒士なのだ。
今は王都にいるが、アムルスに戻り診療所を続けていく。
結界術を習得できたことはありがたいが、魔術に関しての研究などは向いていないと思う。
「なんにせよ、お疲れパパ。ウィルソンおじさんが言うには、パパとミナ、エンジーも歴史に名が残るって言っているし、よかったわねぇ」
「……ははは、それはウィルソンさんの冗談だよ」
「うふふ。でも本当に残るかもぉ。そうしたら、一生ディクソン家はドヤ顔できるわねぇ!」
ルナは楽しそうに笑った。




