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おっさん底辺治癒士と愛娘の辺境ライフ 〜中年男が回復スキルに覚醒して、英雄へ成り上がる〜  作者: 飯田栄静@市村鉄之助
六章

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80「二回目の結界術共有」②




 エンジー・ライリートは緊張していた。

 治癒士としてちょっとだけ自信がついたところに、まさか結界術の適性を知ったことで驚きを隠せなかった。

 だが、このくらい「災厄の獣」と対峙したことを思い出せばどうってことはない。あの時の忘れられない恐怖に比べれば、今後何でもできそうな気さえしていた。


 ――だが、甘かった。


「いくよ、エンジー」

「は、はは、はい!」


 女の子と向かい合って両手を握り合うことなど初めてのことで、かつてないほど緊張と動揺をしていた。

 今までミナと手を繋いだことはある。

 年下の女の子なのに、姉弟子であるミナにエンジーは甘えていた。

 なので手を繋いで引いてもらうこともあるし、ご飯を「あーん」してもらったこともある。

 気恥ずかしいし、照れてしまうのだが、ミナの善意はとても嬉しいのだ。

 だから甘んじていたのだが、さすがにこれは緊張する。


 両手を繋ぐと、ミナの暖かい体温と指の細さを感じ取れた。小さな手は、柔らかくて、不思議とドキドキする。

 まっすぐに瞳を向けられて、笑顔を浮かべられると心臓がびっくりして跳ね上がってしまう。

 これだけ近くにいて、自分の緊張に気づかれませんようにと祈った。


 だが、その祈りはすぐにできなくなった。

 次の瞬間、ミナの魔力が流れ込んできたのだ。


(――ミナ先輩の魔力……とても、大きいっ)


 春の日差しのような、適温のお風呂のような暖かで包み込んでくれる魔力だったが、とにかく規格外な魔力量であることを理解した。

 かつて宮廷に勤める魔法使いたちと顔を合わせたことがあったが、ミナほど魔力を持つ者はいなかったはずだ。

 レダも規格外であるが、ミナの方が凄まじいと思えた。


 ――ミナ・ディクソンは成長期なのだ。今後、どれだけ成長していくのかエンジーには想像さえできない。


 思考が途切れる。

 ミナの魔力がエンジーの中に流れてくる。

 止める方法は知らない。

 エンジーの中にミナが入ってくるような不思議な感覚があった。

 顔から炎が出そうなほど、恥ずかしい。

 なぜ恥ずかしいのかわからない。

 でも、恥ずかしい。だけど、この心地よさを手放したくないと思ってしまった。

 そんな欲望を抱いてしまったことに羞恥を覚えてしまう。


 エンジーの魔力が抜けていく。

 違う。

 ミナがエンジーの魔力を使っているのだ。

 彼女と握る手を介して、魔力が巡る。

 そして、ひとつになった気がした。


 まるでとろけそうな、初めての感覚だ。

 ミナが自分の中に入ってくる感覚と、エンジーが彼女の中にはいる感覚が繰り返される。

 脳がどうにかなってしまいそうだ。

 心がむずむずする。

 泣きそうで、笑いそうで、でもとても切ない。


 この感情に名をつけるのであれば、「幸せ」だ。


 他の感情がもっともっと流れ込んでくる。

 自分の感情なのか、ミナの感情なのかわからない。


 ――だが、とても幸福だった。


 エンジーは感謝した。

 ミナと出会えたことに心から感謝した。

 彼女がいたから、エンジーは頑張ってこられたのだ。


 ――エンジー・ライリートにとって、ミナ・ディクソンは…………。


 そこで意識が飛んだ。

 あまりにも心地よすぎて、気持ち良すぎて、鼻から何かが出てくる感覚もあったが、今はこの多幸感に包まれながら目を閉じたかった。






 レダ「………………」


 双葉社モンスターコミックス様より「おっさん底辺治癒士と愛娘の辺境ライフ~中年男が回復スキルに覚醒して、英雄へ成り上がる~」の最新14巻が発売となりました!

 1巻〜13巻も何卒よろしくお願いいたします!


 :本日、コミカライズ最新話更新です!


 14巻は、13巻に引き続きレダにとっての重要人物の登場です!

 ぜひ応援していただけますと嬉しいです!

挿絵(By みてみん)

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