78「結界術成功?」③
「これは……いろいろと、やばいかも」
結界術の使い方を習得したレダは、ミナと手を離すと同時にその場に崩れ落ちた。
「おとうさん!?」
「ちょ、パパぁ!?」
「レダ!?」
「レダ先生っ!」
汗をポタポタと流し、地面に手を着いて洗い呼吸を繰り返すレダに目の前にいたミナが、少し離れていた場所からルナとヒルデ、そしてエンジーが駆け寄ってきた。
離れて一部始終を見守っていたルルウッド、レイチェルもレダの元に飛び出そうとしたが、教皇ウィルソンが静かに手で制していたので足を止めてしまう。
「大丈夫ですか、レダくん?」
「…………はい。すみません、こんなに魔力を使ったのは久しぶりで、それに」
「おとうさん?」
娘を伺うも、レダのようにひとつになった感覚はミナにはなかったようだ。
なんと言って良いのか悩み、言葉を濁すことにした。
「今までにない経験をしました。魔術師として、凄まじい経験であったと思います」
「……なるほど。立てますか?」
「ありがとうございます」
差し出されたウィルソンの手を借りてレダはゆっくりと立ち上がる。
心配そうにする家族たちの頭を撫でて、「大丈夫」と笑ってみせた。
「ごめんごめん、久しぶりに魔術で疲れちゃったよ」
「よかったぁ」
ミナはレダがなんでもないことに安心した様子だが、ルナとヒルデは不思議そうな顔をした。
「え? パパじゃなくてぇ、ミナが結界術を使ったんでしょう?」
「ミナは平然としているのだが、レダだけ消耗しているのはなぜだろうか?」
「それは俺にもわからないかな」
ミナに魔力がレダを循環した時に、おまけとばかりにレダの魔力を奪っていった。
勝手な推測ではあるが、レダが結界術を無意識に使ったのか、それともミナがレダの魔力も使用して結界術を使ったことで、レダが結界術を習得できたのかもしれない。
だとしても、相当魔力を持っていかれた。
レダの魔力量は相当のもので、ちっとやそっとのことでは枯渇しない。
以前から、治癒術の効果が高かったのも魔力によるゴリ押しがあったからだ。
そんな自慢の魔力が、七割ほど消えている感覚がある。
普段から魔力を消費しているレダであっても、わずかな時間でこれだけの魔力を消費するのは稀なことだ。
それゆえに、大きく疲れ、倦怠感もある。
「レダくん、疲れているところ申し訳ありませんが、可能なら結界術を使ってみてくれませんか?」
「――はい」
レダは結界を展開した。
うっすらと金色の粒子が混ざった淡い緑色の結界がレダを中心に広場を囲う。
どよめきが、起きた。
いくらミナがレダを介して結界術を使っても、習得するに早すぎると思われたのかもしれない。
レダ自身も、あれだけ使えなかった結界術が、一度の身体を流れただけでこんなにも簡単に使えるようになるとは思っていなかった。
「――お見事です。では、ミナちゃん、まだ元気ですか?」
「うん!」
「では、次にエンジーにもレダくんと同じことをしてあげてください」
「はーい!」
「…………ぬ?」
レダは真顔になった。
(……まるでミナとひとつになるような感覚をエンジーも? それって、駄目じゃん? 駄目駄目じゃん? 父親として許すことのできる許容範囲を超えているというか、さすがに良しとできない案件じゃないかな!)
「教皇ウィルソン様っ、エンジーには俺が!」
「…………よくわかりませんが、魔力を大きく消費している以上、無理をさせたくはありません」
「おとうさん、私はエンジーの姉弟子だから! 大丈夫だよ! ちゃんとおとうさんにできたみたいにしっかり教えてあげるから!」
「ミナ先輩、よ、よろしくお願いします!」
「――うん!」
ミナからの熱意が伝わってくる。
父親として、彼女を邪魔することができなかった。
レダは唇を噛んで、応援した。
「――ウン、ガンバッテネ」




