77「結界術成功?」②
ミナが魔石を使うことなく、数時間で結界術を使用できたことに誰もが驚いている中、ウィルソンは彼女を褒めながら、何かを閃いたように提案した。
「――ミナちゃん、結界術を上手く使えないレダくんとエンジーのために協力して欲しいんだけど、いいでしょうか?」
「うん!」
「ありがとうございます。では、レダくん、こちらに」
「は、はい」
元気いっぱいに返事をするミナに笑みを浮かべたまま、ウィルソンはレダを手招きした。
ウィルソンの顔は、どこか楽しげに見えた。
「ミナちゃんに試してほしいことがあります。レダくんを介して結界術を使ってみてくれませんか?」
「お父さんを?」
「そうですね、レダくんの手を握りミナちゃんが一緒に結界術を使ってみましょう。できますか?」
「うん、大丈夫だと思う!」
「お願いします。さあ、レダくん、手を」
「……はい。ミナ、お願いします」
「任せて、お父さん!」
ふんす、とミナはレダに教える立場であることが新鮮なのか、鼻息が荒い。
ミナとレダが両手を重ねる。
「いくよ、お父さん」
「ああ、お願い」
ミナの魔力がレダに流れ込んできた。
そのあまりにも大きな魔力に驚くが、不思議と他者の魔力が入ってくることに違和感がない。
むしろ、春の陽だまりのような暖かな景色を脳裏に浮かべてしまうような、とても穏やかで心地のよい魔力だ。
ミナの魔力がレダを通じて円環となる。
魔力が混ざり合う感覚を覚え、不思議な気持ちになった。
レダにはミナの魔力の流れ、息づかい、力を入れるタイミング、すべてを把握できていた。
まるで自分がミナ・ディクソンになったような感覚がある。
いや、違う。
今は、ミナになっているのだ。
魔力と共に、意識がミナに引っ張られる。
――すると、レダの目の前にレダがいた。
違う。違う。違う。
今、ミナの瞳を介して自分の顔を見ているのだ。
「いくよ、お父さん」
「――ああ」
ミナの声が自分の口から出てきた気がした。
次の瞬間、ミナの魔力が強くなっていった。
小さな身体のどこに、これほどの魔力を有しているのか不思議なほど、強く大きな魔力だった。
春の陽だまりのようだった魔力が荒れ狂う嵐のような魔力に変わる。
驚くべきことに、その魔力をミナがすべて制御下に置いていることだ。
強い魔力がひとつに集まり、さらなる力となる。
ゆっくりとゆっくりと魔力は術師の願いを聞き、悪意から「みんな」を守るための力と変わっていく。
――ああ、これが結界か。
レダはミナの身体を通じて、結界術の使い方を理解した。
なるほど、自分の使い方とはまるで違う。
守りたいという意思が大事だった。
想いが力になることを知った。




