72「訓練開始」①
――翌朝。
レダとミナ、そしてエンジーは教会の中庭の一角にいた。
教会には兵もいて、普段はこの場所で鍛錬をしているようなのだが、午前中は使われていないというので使わせてもらっているのだ。
観客はルナとヒルデ、ルルウッド、レイチェルの四人だ。
テックスたち冒険者は王都の冒険者ギルドで情報収集と顔馴染みとの挨拶をするため居合わせていない。護衛に関しては、教会内では必要ないので問題はなかった。
ヴァレリーはディアンヌと一緒に教会の手伝いを今日も続けている。彼女たちの傍には、エルザが控えてくれているので安心だ。
「では、さっそく始めましょう」
にこやかな笑みを浮かべた教皇ウィルソンに、レダたちが礼をする。
「よろしくお願いします」
「よろしくおねがいします!」
「よ、よろしく、お願いします」
レダは緊張気味に、ミナは好奇心を露わにして、エンジーはなぜ自分もと困惑気味だった。
それぞれ性格的なものがよく顔に出ている、と少し離れたところで見守っているルナはそう思ったはずだ。
「結界術に関して簡単に説明しましょう」
「まず、こちらをご覧ください」
そう言ってウィルソンが懐から取り出したのは、青い魔石だった。
加工された魔石は宝石のようだった。
そんな魔石に銀の装飾がほどこされ、細い鎖が付いている。
「結界術は魔石を介してしようしますが、特別魔石を必要としているわけではありません。ただし、魔石を糧にした結界術は使用者の技量にもよりますが数年単位で魔物を寄せ付けない結界を一定の範囲に展開することができます。魔石とはモンスターや魔獣の体内に蓄積された魔力の結晶です。その魔石から魔力が尽きるまで、結界が人々を守ります」
ただし、なぜ魔石を介する結界術にモンスターたちを拒む結界が展開できるのか詳細はわかっていない。
いくつか、考えはある。
結界術を開発した人間がそのようにしたから、という単純なもの。
魔石には解明されていない力が眠っているからというもの。
もしくは、ただの偶然をずっと利用しているという曖昧なものばかりだ。
結界術を使える人間が少ないため、現代でははっきりしたことがわかっていない。
だが、利用するには問題なく、多くの街で結界術は使用されているのだ。
ただ、結界術も絶対ではなく、結界以上のモンスターや数の暴力にはどうしても対処しきれない。
結界術を使うために使用した魔石や、術者の魔力にも効果は左右されるようだ。
「魔石に術式と魔力を刻み込むことで、ひとつの魔導具にしてしまうのです。そうすれば、継続的に魔力を込めることで結界は維持されていきます。ですが、まずは結界術を習得する必要があります。もちろん、魔石を使用せず、自身の魔力だけで、です」
ウィルソンが手を挙げると、背後に控えていた兵士たちが静かにこちらに近づいてくる。
「魔力が強い者、聖属性の者が結界術を習得しやすく、また強い結界を張ることができます。では、座学というほどではありませんでしたが、説明はこのくらいで実践に移りましょう。ただし、私の教えは、現実的で痛みを伴うでしょうが覚悟してください」




